幼い頃に、ただ 1 人の家族だった母を事故で亡くしたひな菊。 長く寂しい梅雨の夜、小さなひな菊はひとり、たて笛を吹く。その音を聞きつけてはやって来て、彼女を唯一支えたのは親友のダリアだ。 ダリアが母の故郷ブラジルへと旅立ち十数年。大人になったひな菊は、叔父と叔母が営むお好み焼き店で焼きそばをつくりながら居候生活をしている。 梅雨のある日、母を亡くした夜と同じ土砂降りの中、ブラジルから1通の手紙が届く。 そこには、遠く離れ、二度と会うことのなかった二人の孤独な魂の不思議なつながりが記されていて――。