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バージンブルースのフクのレビュー・感想・評価

バージンブルース(1974年製作の映画)
3.0
'74年に公開された藤田敏八監督作品。
藤田敏八監督は、'74年だけで秋吉久美子主演作を3本製作、公開しており、次代のスター候補として彼女を高く買っていた様子が伺える。
オリジナル脚本による本作は、前半の東京篇と後半の岡山篇に大きく分かれているのだが、前半と後半が全く違う作品かと思えるほどに雰囲気から何から別の物語になっていることにまず驚かされる。
強いて言えば前半と後半を繋ぐ存在として途中から長門裕之が物語に関わってくるのだが、まずこの桑田佳祐激似時代の長門裕之が何故に秋吉久美子の個人的な物語に関わってくるのか、そしてそれを何の違和感も感じない様子で秋吉久美子が何故に受け入れるのかが観客には全く伝わってこない。
その後スクリーン上で巻き起こる出来事のそもそもの根本となる部分に疑問を抱きながら物語を追わなければならないのは正直厳しいと言わざるを得ない。
そこが解決しないと秋吉久美子のバージンを何故に長門裕之に捧げるのかという作品のメインテーマに当たるであろう問題まで謎に包まれる事態に至ってしまうのである。
それでももう一つの見どころである秋吉久美子の、あどけなさを残しつつ大人になろうと背伸びする姿の可愛らしさはスター性充分で納得の存在感であった。
劇中本人役で出てきた野坂昭如が唄う主題歌「バージンブルース」と挿入歌「黒の舟唄」は作品の雰囲気を上手く歌詞とメロディーに乗せており悪くなく、意外に聴かせてくれた。
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