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模倣の人生のReeのレビュー・感想・評価

模倣の人生(1934年製作の映画)
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▷ Synopsis/
まだ幼い娘のペオラを抱えた黒人女性のデリラは白人女性のベアトリスと偶然出会い、お手伝いさんとして働き出す。ある日デリラが朝食にパンケーキを作ったことをきっかけにベアトリスは新たな仕事を思いつき、2人はビジネスパートナーとして成功の道を歩んでいく。ところが人種問題などが関係して親子、ロマンスの多方面で徐々に亀裂が入っていく。結果としてデリラは倒れて亡くなり、ベアトリスも苦渋の決断をすることとなるのだ。そんな、友情、親子、ロマンスを様々な観点で描き、どれも余すことなく編み込んだ作品である。

▷Best phrase
「咎められるのは誰なのか神様にもわからない」デリラ

▷「Imitation」の意味
クローデット・コルベールが主演を演じているとはいえ、この作品にスクリューボール・コメディ的な要素は含まれていなかった。そこで、タイトルにもなっている「模倣」という言葉の意味について考えたい。辞書で調べたところ、模倣の意味は「まねること。似せること。」である。¹)デリラが黒人であることを理由にペオラが母親を突き放すという物語の展開からすると、一見この言葉は無関係であるように思える。しかし、これを逆手に取ってみると深いメッセージが隠されているようだ。「切っても切っても親子は親子」という意味ではないだろうか。デリラは確かに一度黒人である母親を捨てるような行為をした。ところが物語の終盤、母親の偉大さに気づき、母親の望んでいた道を歩み始めるのだ。親子の絆が見られるシーンは他の場面でも見られる。1つは黒人差別を気にするペオラに対し、デリラが「神様が貴方を黒人に。受け入れなさい。」と言い聞かせるシーン。もう1つは、ベアトリスが恋人との幸せか、娘との幸せかで悩んだ末、娘を取ったラストである。どんな運命を与えられようと母親が産んだ子であり、それぞれの幸せが必ずある。というメッセージが込められているようだ。この「家庭それぞれの幸せ」のメッセージは、ビジネスパートナーである2人だが、ベアトリスは上の階へ、デリラが地下へそれぞれ向かっていくシーンにも刻まれているように思えた。
またこの1930年代は全米国人会議が創設され、人種差別に反対する動きが高まってきた時期でもある。²)この黒人と白人の女性2人をあえてパートナーにしたことによって、ヘイズ・コードの内容内Ⅱにある「異人種混交(黒人と白人の性的関係)は禁じられる。」の項目を守りつつも、人種関係無く幸せがあることを訴える事に成功している。以上を理由に「模倣」は親から受け継ぐ、それぞれの幸せを意味しているのではないか。
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