写真家の北村竜次は、北海道・札幌のとある専門学校で特別講師として写真の講義をした際に、ジャズシンガーを目指す1人の生徒・小春と出会う。歌っている姿を撮ってほしいと頼まれた竜次は、ジャズクラブに小春のライブを見に行き、その才能にすっかり惚れこむ。東京で妻と娘と暮らす竜次だが、それ以来、毎年、小春を撮った写真の個展を札幌で開催するようになる。小春のステージの写真を撮り続け、9回目の個展を開催した春。ギャラリーのオーナーである吉岡から、ギャラリーを閉めることを伝えられた竜次と小春は、毎年続いてきた撮り・撮られる関係に終わりが来るかもしれないことを予感する。一抹の寂しさを抱えながら、小春はステージに立ち、秘めた気持ちを込めた歌を観客に届ける。そんな小春の姿を、竜次は黙々とカメラに収め続ける。9年間、少しずつ変わっていく小春の姿をカメラに収め続けてきた竜次。会うたびに、小春から就職や結婚の報告を受け、彼女の人生が進展していることを感じていた。だが、個展の最終日に小春の専門学校時代の友人らが現れ、実は小春が結婚していないことを知る。個展を終え、東京へ戻っても、竜次の悶々とした気持ちは消えない。そんな折、娘は一人暮らしを始めることになり、妻からは離婚を切り出される。ずっと蓋をしてきた自分の本当の気持ちと向き合い、竜次が出す答えとは…。
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