パンダ子パンダ

お引越しのパンダ子パンダのレビュー・感想・評価

お引越し(1993年製作の映画)
5.0

離婚を描いてる作品の中で一番好きな作品だったな。母と父の離婚を、小学生の少女を通して描く物語。

日本の団地や一軒家などの普遍的な風景を撮ってるはずなのに、なんで、こんなにも美しいのさ。

こんなにも、殴られたような感動を覚えた作品、たけしさん以来だな。間違いなく、私にとってのオールタイムベストな作品です。こんな作品を作って世に放ってくれてありがとう。

セリフも好きなセリフが多かったけど、それよりも圧倒的に演者の表情や映像の構図に意味を内包する感じ、映画って感じがして好きだったなぁ。言語化できないし、無知故理解も浅いけど、すんごく好きだ。

京都・琵琶湖のロケーション、役者の演技、カメラワーク、セリフ、服装などの美術全てがドタイプ。冒頭で、レンコが大好きな加茂川デルタ背景に爆走してる時点で、もうなんか、好きだった。

なんだか、色彩やカメラワークも相まってフランス映画見てるような気分になった。すっげぇ派手な色彩。夜絵でこんなにもフィルムの映像で感動したの初めてかも。そりゃ、京都が舞台でかつ、夏の夜ってなると、映えるけど、それでもこんなにも照明設計などの、顔面の当たり具合を美しく外ロケで構成できるの本当にすごい。外のシーンでも、人工物ばりに設計されてて、赤や寒色の色彩が幻想的でかつ、美しい。しかも、これ、フィルムでしょ??すごすぎるよ。

そして、小学生の主人公レンコの演技。あくまで作中で描かれるレンコは(こども)ではある。だけども、途中でアップでぶち抜かれた時の表情は、だんだんと離婚を通して自立していくレンコであって、そんな演技をあの歳でやった田畑さんは化け物だ。こども、だけど、おとな。なんだか、ずっとロストチルドレンのジュディットヴィッテを思い出しちゃった。

おとなは判ってくれない。こどもはおとなが思ってるよりも自立をしているし、そして、脆いんだ。両親が見ようとしたら、見えるものを見なかったんだ。これは、離婚の映画って言うより、母と子の和解が主題のように個人的には感じた。

一本の作品を通して、こんなにも心に残る映像が沢山ある作品、珍しい。ふとしたシーンも、きれいだけじゃなくて、めちゃくちゃに特徴的で美しいの。ローポジとハイポジを利用しまくった、長回し。人物の立っている位置や、目線の高さをもろ心理描写に投影させてる感じ。同じ高さなら和解、2人の位置が上と下なら対峙のような。特に、父と子の琵琶湖でのシーンの立ち位置の入れ替わりはもろセリフとリンクしててすげぇぇってなりました。

大好きなシーンは、父とレンコがバイクで走ってる時のシーンです。あの時の中村貴一の表情がすごくたまらない。全役者さんの演技が素敵でした。

大好きな映画。もっと映像に内包されている意味を理解できるよう、もっともっと教養をつけてからまた見たい。ほんっとに好きだった。

井上陽水の東へ西へも大好きだから嬉しかった。
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