スギノイチ

真昼の罠のスギノイチのレビュー・感想・評価

真昼の罠(1962年製作の映画)
4.4
あるエリートリーマンが殺人事件の証人になるも、愛人との逢瀬を明るみにしたくないばかりに嘘の証言をしてしまう。
しかも、その愛人には別のパトロンがいて、それもよりによって会社の実権を握る権力者で…
まるで『黒い画集 あるサラリーマンの証言』『黒い画集 第二話 寒流』を併せたような話だ。
観てもいない映画(ちなみにボッカチオ'70)をアリバイに使うとこまでそっくり。
見栄と保身で負のスパイラルまっしぐらになる男。そういうのは田宮二郎がぴったりだ。

上手いこと周りを手玉に取って世間渡ってるつもりだった三十路男が、少し弱り目になった途端、内心小馬鹿にしていた周囲の人々こそ実は獣だらけで、逆に喰らわれるという皮肉。
そもそも下半身で失敗したのに、真相調査においても性懲りもなく下半身頼りな辺りも救えない男である。
リーマンという生き物は、中学や大学よりも30ぐらいで一番イキってしまう気がする。

この映画に限らず、田宮二郎が演じるピカレスク型リーマンは一見スマート&ハンサムでも、中身はコンプレックスと欲望でドロドロなところが人間臭くてとても好きだ。
ダークヒーローというより”単なる嫌なやつ”なのだが、意外とそういう主人公がいないのだ。
どの映画でも詰めが甘く、大抵破滅してしまうのがパターンだが、この映画では結末が少し違っていて、そんなところも忘れがたい。
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