オクターヴ

アカルイミライのオクターヴのレビュー・感想・評価

アカルイミライ(2002年製作の映画)
4.9
今日の時点で黒沢清監督マイベストは「アカルイミライ」のまま更新されていない。映画音楽を担当したPACIFIC 231とのコラボレーションが最高だった。まるで音楽が先にあり、この映画がそこから誕生したかのような印象すら受ける。蓮実重臣さんが生きていたら、黒沢清監督とのコラボレーションは続いていたと思う。床に落ちたアカクラゲがまだ生きていたという奇跡的なシーンで流れるあのBGMによって地獄のような人間ドラマがファンタジーになったのだ。また、青春というのは甘酸っぱくてキラキラしたものだけじゃなく、暗くて怖くてビクビクしちゃうものでもある。希望があるようでなく、ないようである。暗さが街の雰囲気に溶け込む。絶望感すらある。タイトルは皮肉か?今の日本の雰囲気がこの映画の世界観に寄ってきたようにも感じる。ときどき映画は本当の未来を描いてしまうことがある。しかし、人間の生命力は強い。あのアカクラゲは人間の生命力の象徴だ。そう思わせてくれる希望を描いた映画だった。