キャトラーズ

ミニットメン:ウィ・ジャム・エコノのキャトラーズのレビュー・感想・評価

5.0
「この学校に通ってた。
学位は役に立たなかった、
俺の専攻はパンクだ。」
かっ、か、か、か、
カッチョイィィィ〜〜〜…!

この映画のことを知って初めて
ミニットメンを聴き始めたが
なんでこれほどまでに力強く画期的なバンドを
今まで知らなかったのだろうということと
知った今となっては何故みんな知らないのだらうと
笑えてくるほどの優越感を味わっている。

初期パンク的な衝動を優先とするサラウンドに
急に崩れるリズムがそれでいて
曲の一本線のギリギリを保つ荒技、
ブルースにも感じる力強い歌い方、
英語は分からないから悲しいが
PVを観るだけでも伝わる政治的な作風、
どこ取ってもオリジナルで
どこ取っても一級品だった。

このバンドの演奏に圧倒されるのは
どこかしらから湧き出てくる
彼らの怒りの衝動なんだと思う。
ドラムもベースもギターも歌声も表現というより
体が怒りという感情に乗っ取られ
限界まで全身を使って曲を放つ。
まさにこの時代のパンクバンドにしか
出せない剥き出しの骨のある音楽だ。
……とここまで書いたが
ベースのマイクに言わせると
〝自分達の音楽は怒りではない、
そういう感情は内に秘めていて
表には出さない。ミニットメンは
いつも曲解される、それが俺たちだ。〟
だそうだ…難し過ぎるよ…

ミニットメンは形がしっかりしている。
作中でも語られているが
ギターの高音とベースの低音が
ハッキリと分かれていて
激しいながらもスッキリして聴きやすい、
特にギターの音の垂直に耳に刺さる感じが良い。
またベースのちょっといやらしいメロディに
ジャズとファンクの味が混ざったような
ドラムが合わさって構成されている。
超絶カッコイイ。

トラックのリズムとボーカルのメロディの明確なズレは
その部分に文学的な情緒すら感じ
人間が作りだしている音楽の色が強い。
これが一番大事なんだよ、
打ち込みやらDTMばっかで
最近の音楽はリアルな質量を感じない。
いや、最近の音楽っていうのは広すぎる表現だな、
最近のバンドだな。
というか実際に人が演奏してるにしても音が多過ぎる。
もっと雑でいいから人間を見してくれ。

このバンドの曲を聴いてると
全体的に2分以下の曲ばかりで驚く。
音楽にそこまで商業性が無かった時代なのかもしれんし
当人たちにもその気は一切無かったのだろうけど
本当にどこを取っても異質なことが分かる。

初めてダイナソーJR.のJ・マスキスの
喋ってるところを見たが
普段の会話が既にあんな感じなんだと
知って笑ってしまった。

ラストに題名の言葉を発するのだが
そのシーンがめちゃくちゃカッコイイ。
良いもの見た。
キャトラーズ

キャトラーズ