テリー微糖

愛のお荷物のテリー微糖のネタバレレビュー・内容・結末

愛のお荷物(1955年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

川島雄三監督の作風を表す
監督自身の言葉として

「さよならだけが人生だ」

という言葉があります

「幕末太陽傳」や
「洲崎パラダイス 赤信号」には
この作風が顕著に表れているのかなと
個人的に思います

その意味では
「愛のお荷物」という作品は
川島雄三監督作のなかでは
異色の作品だと感じました

「幕末太陽傳」や「洲崎パラダイス」は
「さよなら」をラストに据えるが

「愛のお荷物」は、真逆で
「迎え入れる」ということを
テーマとして描いてるように
感じたからです

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人口の爆発的増加が
社会問題化し、
人口抑制のための
早急な政治的対策が求められるなかで
その旗振り役を務める厚生大臣が
今作の主人公
(たぶん、総理は吉田茂かな?)

優生保護法などの関連法案を
国会で審議して立法を目指すなか
大臣に大きな問題が!

なんと、奥さんが妊娠!

これを皮切りに
・娘の妊娠
・政策秘書が自分の息子の子を妊娠
・昔お付き合いしてた
舞妓さんの息子の父親が自分だった

ことが立て続けに発覚!

人口抑制のための政策の
旗振り役を務めるべき
厚生大臣の家族人口が
爆発的に増加することになり
政治家としてまさかの大ピンチ!

てんやわんやのドッタバタ展開を
繰り広げるコメディ映画

でも、
「オレの政治家生命がダメになるから
いますぐ中絶しろ!」なんて
無茶なことは全く言わない

そして、政治スキャンダルで
ドロドロになりそうな展開にならずに
踏み止まる

今作は、そんな政治ゲームを
主眼に置かない

メインは
「いかにして家族として
迎え入れさせるか」という
女性の知性的な作戦の遂行にある

川島雄三監督の映画の特徴である
スクリューボールコメディを超える
光速なセリフと物語展開は
炸裂してるんだけど
観ている側が置いてかれる
ギリギリのところで止めている

このバランスが絶品!

そして、このドタバタコメディのなかに
人口政策だけではなく
「逆コース」を行こうとする
防衛政策にまで風刺を刺してくる

この器用さと爆発的に力強い
コメディ演出の釣瓶打ちが
全編に渡って展開される
恐ろしく面白い映画です!

ラストシーンの男どもの
ドタバタっぷりを
早送りで見せるのが
あざとく見えずに
大爆笑できるバランス感覚は
いまの日本の映画監督にない
川島雄三監督独自の感覚だと
思います!

「幕末太陽傳」に続いて
川島雄三監督作品の
大傑作っぷりには
驚きを禁じ得ません

観る機会があれば
観るべき作品だと思います!

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ちなみに
助監督には「今村昌平」の
クレジットがありました
テリー微糖

テリー微糖