みゆ

細雪 ささめゆきのみゆのレビュー・感想・評価

細雪 ささめゆき(1983年製作の映画)
5.0
2016.02.09(32)
録画


NHK BSプレミアムにて。

もし「今後の生活で一本だけしか映画を見られないとしたら何を選びますか」と問われたら迷わず今作を選ぶ。

私が市川崑の、谷崎潤一郎の、岸惠子のファンになり、着物好きになったきっかけが今作である。

初めて見たのはいつだっただろう。私が小6の時に公開されたようだが劇場では見ていないので、中学生になってからだろうか。家のテレビで父と母と見て以来、放送される度に見てきた。そこには私が思う美が凝縮されていて、何度見ても見飽きることはないし、いつも感動・感激に打ち震える。

幼い頃から退廃的な美には強い関心があった。でもそれだけではなく、健全な美にも魅かれていて、今作ではその両方が描かれているのがツボだったのかもしれない。

鶴子が、亡き父が雪子の為に誂えた沢山の婚礼衣装を広げるシークエンスがとても好きだ。その華やかさのすぐ近くでその家の家政婦が戦争で弟を亡くして泣いている。その対比に残酷な美を見出してしまう自分の不健全さに戸惑った時期もあった。こういう気持ちはこっそりと密かに胸の中に収めておくべきことだと思っていたのだ。

お日様の下に出せる美と、そうではない美がある。上にも書いたが、今作ではその両方が描かれているのが良い。姉妹たちや彼女たちを取り巻く人々は色々なことで大騒ぎする。それぞれが腹に含むものがあるので彼らの関係はアンバランスなように見えるが、それゆえにバランスを保っている。市川崑特有の明暗の使い分けがその緊張感を実に上手く表現していて舌をまく。

こんなに長年見続けているのに変わらず好きで、どんどん思い入れが強くなる作品は滅多にない。映画が好きで良かったなと思う作品のひとつである。
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