Boss2054

太平洋の翼のBoss2054のレビュー・感想・評価

太平洋の翼(1963年製作の映画)
5.0
一人8.15シリーズ。
今年は、太平洋の翼。

明るく楽しい東宝映画は、
戦争映画も明るい。
が、この明るさが、
その悲劇性を際立たせる。

戦争と云うのは、不条理の連続である。
状況が不条理、
命令が不条理、
決断が不条理、
対処も不条理、
その不条理さの連続をこの作品は際立たせる。

例えば、
輸送機内で戦死した戦友を、機体の重量を軽くするために、機外へ投げ捨てる。
ちなみにこのシーンの加山雄三、
あ、若大将の演技が秀逸。
表情だけで、心の苦しみを見事に演じている。
若大将って、こんなに芝居巧かったっけと感心した。
このエピソードがのちの星由里子さんとの淡い恋愛模様に繋がるのだが、
それが、若大将とスミちゃんであるのは、
まあ、ご愛嬌。

他にも、
戦艦大和が、敵戦闘機に襲われるが、
味方機、ちなみに紫電改は、
命令により途中で帰還しなければならない、
この時の渥美清さんの演技も秀逸。
命令に違反して、大和を守るために、その運命を共にするのだ。

主人公の三船敏郎さんが、
特攻に反対して、
精鋭パイロットたちを集めて、
新しい航空隊を作ると云う話なのだが、
三船さんの健闘虚しく、
各隊の隊長、
加山雄三、夏木陽介、佐藤允の各氏は戦死して行く。
果たしてそこまでして手に入れた平和は今どうなっているのか?
と云うのがこの作品のテーマだろう。

役者陣が良い。
先に挙げた渥美清さんもそうだが、
西村晃さん、この人は、本物の零戦のパイロットだった。
田崎潤さん。
この人の一種軍装姿のサマになるコト。
イヤでも海底軍艦、轟天号を思い出す。
とにかく、その後の主演級の役者さんが脇に回って大活躍。
今はもう観るコトの叶わない風景だろう…。

セリフもゼロ戦をレイ戦、
大尉をダイイ、
など、本物である。
その所作もスタッフ、キャスト共に戦争体験者が存在したのだから本物だ。
今の戦争映画とは全然違う。

円谷さんの特撮も凄い‼︎
オープニングの空中戦なんて、
どうやって撮ったのだろう。
大空を無数の戦闘機が縦横無尽に飛んでいる。
アナログ特撮の魅力爆発である。

一見するとポップな戦争映画に見えるかもしれないが、
その裏に隠れた反戦のメッセージは実に重たい…。
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