一人8.15シリーズ。
今年は、太平洋の翼。
明るく楽しい東宝映画は、
戦争映画も明るい。
が、この明るさが、
その悲劇性を際立たせる。
戦争と云うのは、不条理の連続である。
状況が不条理、
命令が不条理、
決断が不条理、
対処も不条理、
その不条理さの連続をこの作品は際立たせる。
例えば、
輸送機内で戦死した戦友を、機体の重量を軽くするために、機外へ投げ捨てる。
ちなみにこのシーンの加山雄三、
あ、若大将の演技が秀逸。
表情だけで、心の苦しみを見事に演じている。
若大将って、こんなに芝居巧かったっけと感心した。
このエピソードがのちの星由里子さんとの淡い恋愛模様に繋がるのだが、
それが、若大将とスミちゃんであるのは、
まあ、ご愛嬌。
他にも、
戦艦大和が、敵戦闘機に襲われるが、
味方機、ちなみに紫電改は、
命令により途中で帰還しなければならない、
この時の渥美清さんの演技も秀逸。
命令に違反して、大和を守るために、その運命を共にするのだ。
主人公の三船敏郎さんが、
特攻に反対して、
精鋭パイロットたちを集めて、
新しい航空隊を作ると云う話なのだが、
三船さんの健闘虚しく、
各隊の隊長、
加山雄三、夏木陽介、佐藤允の各氏は戦死して行く。
果たしてそこまでして手に入れた平和は今どうなっているのか?
と云うのがこの作品のテーマだろう。
役者陣が良い。
先に挙げた渥美清さんもそうだが、
西村晃さん、この人は、本物の零戦のパイロットだった。
田崎潤さん。
この人の一種軍装姿のサマになるコト。
イヤでも海底軍艦、轟天号を思い出す。
とにかく、その後の主演級の役者さんが脇に回って大活躍。
今はもう観るコトの叶わない風景だろう…。
セリフもゼロ戦をレイ戦、
大尉をダイイ、
など、本物である。
その所作もスタッフ、キャスト共に戦争体験者が存在したのだから本物だ。
今の戦争映画とは全然違う。
円谷さんの特撮も凄い‼︎
オープニングの空中戦なんて、
どうやって撮ったのだろう。
大空を無数の戦闘機が縦横無尽に飛んでいる。
アナログ特撮の魅力爆発である。
一見するとポップな戦争映画に見えるかもしれないが、
その裏に隠れた反戦のメッセージは実に重たい…。