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ペーパー・ムーンのatmyownpaceのレビュー・感想・評価

ペーパー・ムーン(1973年製作の映画)
4.0

スコア意味なしメモ用

●概要
天涯孤独の少女と孤独な詐欺師が、少しずつ親子の距離に近づいていくロードムービー。

●感想
母親の葬式から始まる悲しげな9歳の少女は、旅を通してそれは逞しく成長していく。
やっていることは詐欺なので、あまりよろしくはないが生きるためには手段を選んでいられない。時代は1935年のアメリカ、大恐慌時代。ルーズベルト大統領が推進したニューディール政策が進行中だが、街には失業者が溢れ世の中は混乱していた。

詐欺師の男は、口が達者でどんな場面でも切り抜けられる自信があった。だが、旅を続けるなかで頭のよい少女に助けられる場面もあり、2人は様々なハプニングを乗り越え、お互いを信頼し必要としていく。

少女が男に求めた「200ドルの貸し」から始まり、「200ドルの貸し」に終わる。詐欺をするようなどうしようもない男だけれど、少女にとっては遠い親戚のおばさんより、旅を一緒に乗り越えてきた他人(擬似の父親)の方が愛おしいのだ。

エンディングが近づくにつれ、どんな終わり方になるのだろうとドキドキしていたが、何とも粋なラストで、最後は親子というよりバディーものになっていて暖かな気持ちになった。

まだ200ドルの貸しがある、2人の道は続く。

DVD特典の監督インタビューでも言っていたが、作家性は入れつつ大衆にも分かりやすい画作りやエンタメ性を大切にしたとのこと。その言葉通り、ロードムービーたる「景色や道」の画がとても良かった。何より、少女役のテイタム・オニールの愛らしい見た目にハスキーボイス、今ではアウトな喫煙シーンの画力たるや。また、あとで知ったが主役の2人は本当の親子らしい。どうりで2人の距離感が良かったわけだ。

最後に、劇中では少女1人で撮った紙の月に座る写真も、いつか2人で撮る日が来るのだろうと彼らの幸せな未来を想起させる。