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男はつらいよ 寅次郎春の夢のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

4.1
【寅さんフルマラソン24】
☆脚本が凄い!
本作は、アメリカ人と日本人の
対立を非常に危険なギリギリ
ラインで笑い飛ばす作品となっている。

協賛も日本航空で、
アメリカロケも敢行。
前座のポランスキーの
「チャイナタウン」を
意識した本格ハードボイルドで
挑む力の入れよう。

まさに実験するにはかなり
リスキーな状況だが、
容赦なく「差別」を扱っていく。

寅次郎はアメリカ人が嫌いだと
さくらたちに語る。
理由を聞けば、デカくて
よくわからんというのだ。

相手を理解しようとせず、
見かけだけで判断した
寅次郎は、日本のカルチャーで
もってジョーダンを苛めていく。
梅干しを沢山食わせたり、
まくし立てるような暴言を
はいたりし、
喧嘩までおっぱじめる。

その馬鹿馬鹿しい描写が
笑いを誘うと共に、
人の振り見て我が振り直せの
ごとく観客に問題提起を
仕掛けてくるからこれがじわじわと
心に来る。

☆レナード・シュレーダーだから書ける脚本
暴力団にも入ってヤクザの研究も
しており、英語と日本語の脚本を
書けるレナード・シュレーダー
ならではの「言語の壁」描写
がここにはあった。

初めてジョーダンがとらやに
来たとき、彼は「宿泊場所はこの辺に
ありますか?」と訊く。

しかし、彼は宿泊地を「HOTEL」とか
「MOTEL」ではなく、「INN」という
単語を使って尋ねているのだ。

日本人には「東横イン」こそあれど
馴染みのない単語だからなかなか
理解してもらえない。
確かにマイケルが泊まりたいのは
簡易宿泊所なので「INN」で
正解なのだが、伝わらないのだ。

英語でコミュニケーションを図る際に
単語を注意しないと分かって貰えない。
多少意味は違えど、お互いに
通じる単語を話す必要があることを
象徴した凄いシーンである。

☆上野駅
最後に、本作では昔の上野駅が
登場する。今となっては
ヨドバシカメラやレストラン街に
なっているところが、
更地や、聚楽のビルに
なっていることが分かるシーンになっていたぞ!
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