おしりハートのねこ

めしのおしりハートのねこのレビュー・感想・評価

めし(1951年製作の映画)
4.0
若干のフェミニズムを感じる作品

さと子ちゃん、わたしはかなり好きだった…!
ああいう、わがままでかわいくておしゃれで、自分の若さ美しさの価値をわかってるからこそ遠慮なく人を振り回す女の子、見てる分にはとても楽しいよね。天真爛漫で、したたかなさと子ちゃん、あこがれるし大好きだった。お父さんに叱られてるのにあくびこいたり(笑)、もっと見ていたいキャラクターでした。
主人公も、さと子ちゃんにイライラしながらも少し憧れてるし、羨ましいと思ってるんだよね。

映画はやはり、「女の幸福は夫と安らぎの生活を送ること」と締めて終わる。現在フェミニズムは女性の自立や社会進出を謳う思想とのイメージがあるが、決してそれだけのものではない。
女性たちの複雑な内面をとらえることもフェミニズムの専門だ。

この映画の原節子(主人公)のように、家父長制の中で抑圧され、女中のように扱われる苦しみを拾い上げて言葉に記すことはもちろん歴史の中でフェミニスト達が成し遂げてきた重要な仕事だ。しかし、一方で女性が抱える揺らぎや葛藤、矛盾を女性自身がみつめ、女性自身の言葉で記すこともフェミニズムの仕事だと思う。
例えば、本作の主人公はこれからも女中のように主人の面倒を見て生きていくのだろうし、その苦しみに嘆くこともきっとこの先度々あるだろう。しかし、そういった抑圧を受けている、その中での幸福や安らぎ、そしてそれらと苦しみとの葛藤も必ずあるはずで…
それらの葛藤をそのままに描き出すこと。抑圧がある、その中で女たちがたしかに感じていた幸福や安らぎ、揺らぎや葛藤を見つけ出して、女の歴史の一部として、それらを言葉にすること。これができると、もっと多くの女性にフェミニズムが接続されるのだと思う。

本作、現在を生きる女性たちが抱える矛盾や葛藤にも通じるテーマを扱っていて、とても良かったです。