COZY922

スイミング・プールのCOZY922のレビュー・感想・評価

スイミング・プール(2003年製作の映画)
3.5
これは白日夢? スイミング・プールのまどろむような水面。まさに揺れる水面のように現実と想像, 事実と創作との境界線が美しくぼかされた映画だった。南仏の薫るような自然、雰囲気のある別荘、裸で泳ぎ寝そべる若い女。官能的でミステリアスな空気を煽るエレメントが満載で、単調で緩やかな進み方なのに知らず知らずのうちに物語の世界にのめり込んでいく。

物語は女流作家が執筆活動と静養を兼ねて、編集者の所有する南仏の家に向かうことから始まる。劇中、意味ありげなシーンや不自然な流れなど、伏線を匂わせる箇所が幾つかあったけれど、観終わってそれが伏線だったのかどうか結局のところよくわからない。どこまでが現実でどこからが想像(小説)なのか、ジュリーとは誰なのか作家の自己投影なのか。観る人によって解釈が異なり、ディテールまで考えると解釈のパターンは多岐にわたりそうだ。

白黒つけることが必ずしも正解ではないタイプの作品で、こういう映画が成り立ちやすいのがフランスなんだと思う。この曖昧さを良しとするか否かで評価が大きく分かれるのは必至だけど個人的には好きだ。曖昧さが産む無限の想像の世界に身を委ねながら甘いとも苦いとも言えない不思議なテイストの余韻に浸りたい映画。
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