ゆうき

七つまでは神のうちのゆうきのネタバレレビュー・内容・結末

七つまでは神のうち(2011年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

2018年度最凶トラウマ映画選手権優勝候補作品。
「次々と起こる少女達の誘拐」「10年前の女児失踪」といったキーワードから人間が一番怖い系サスペンス・スリラーを想像してたんだけど、どちらかというとホラー。
というか普通にホラー。
そんな勝手な先入観を差し引いても個人的にツボだった+単行本への期待を込めて☆3.5で。

ある事件をきっかけに心を閉ざしたまゆは誘拐を目撃し、後を追う。
知人の息子の家庭教師をしていたかおるは不気味な日本人形に恐怖する。
売れない女優のれいなはB級映画の撮影後、道に迷い撮影現場に帰ってきてしまう。
さくら(娘)を失ったまなは過去の記憶を反芻する。

この一見何の関係性もない4人がある事件に向かって収束していく様はお見事としか言いようがない。
事件に辿り着くためのキーワードが要所要所で上手に散りばめられていたと思います。
この辺りはもう三宅監督のセンス光りすぎワロタを通り越して最早鬼気迫るものがありましたナ…ホラーが得意なフレンズなんだね(白目)
個人的には点が線になっていく快感、恐怖がピークに到達した瞬間に紐解かれる謎、こういうの大好きです~。
あと、どこまでが現実でどこからが夢なのか境界が曖昧な描写も大変趣がありました。

褒めちぎってしまったのでここでちょっと書いておくけど、もちろんB級ホラーにありがちなツッコミどころはたくさんあった(笑)
お前21世紀にもなって公道使って帰る発想ないの?山伏かなんかなの?警察呼ばないの?などなど。
でももう散々指摘されているし、低予算の中でもこれだけ健闘したんだからここで再度糾弾する必要はないかな~と。

話を戻すとじゃあこの4人がどう交わるのよ?ってところで。
実はさくらはまゆ、かおる、れいなの3人からいじめられていましたと。
そして「仲直りしよう」と呼び出された鎧山で死亡。
これによりママ(+パパ)の復讐劇が始まりました、というのが物語の本当の流れでした。

この映画、上記のさくら死亡事件の背景を知るごとに後味悪い&恐怖ポイントがどエライ増えていくという恐ろしい構造。

①さくらが死んだ理由
母親からもらった大切なお守りを投げられ、回収したポイントで岩崩れが発生し生き埋めになる。
しかし3人は逃げ出してしまい、誰も助けを呼ばなかったため死亡。

②まなの信仰
毎日神棚に祈りを捧げていたにも関わらずさくら行方不明。
「神様の元に返った」ことを最初こそ心の拠り所にしていたものの、さくらに関する手がかりはいつまでも見つからない。
そして「神など最初からいなかった」という結論に辿り着き、信仰を捨てる。
さくらを守るためにあげたお守りがさくらの死に繋がったことはまゆの回想によって知る。

③3人の死
まゆ、れいな、かおるの死に方は実はさくらの理想を具現化したものであった。
親に心配をかけられない、でも3人に対する恨みもあるさくらは生前ひっそりと「あの3人がこう死んでくれたら…」と絵を描いていた。
その結果れいなは焼け死に、かおるはパイプに貫かれて死に、まゆは箱に入れられ生き埋めになって死んだ。
かおるちゃん、これまで棒みたいな演技だったのに体から抜けないパイプをいつまでもヌルヌルしながら絶命するところは素晴らしかったよ…。
ビジュアル的に一番インパクトがあったのは彼女かな。
でもこうやって3人並べてみるとさくらが一番恨んでいたのがまゆだったってことは一目瞭然。
れいなはいじめの主導者でかおるはそれに乗っかっていたけど、まゆだけは当事者と傍観者の中間的立ち位置だった。
もしここでさくらを庇いでもしたら、次は自分がいじめられる…恐らくさくらはそんなまゆの心理、ひいてはまゆ自身を一番許せなかったんだと思う。
実際岩崩れでまゆはどうすべきか逡巡する様子を見せたし、さくらは最期まで助けを求めたのに叶わなかった。
結果的に一番恨みたくなるのはまゆだよね。
だからこそ彼女には長く苦しみ、恐怖する死に方が選ばれたんだと思います。

④まゆの死
気づいたら箱に入れられて生き埋めになっていたまゆは祈りを捧げます。
しかし神がその御姿を現すことはなく、まゆはまなと同じ絶望を味わうこととなりました。
例えまゆの自業自得だとしても助けて!死にたくない!という悲痛な叫びに「もうやめたげてええ」って…なるよね…。
共感性羞恥ならぬ共感性恐怖というか。
この後酸素も足りなくなって飢えて箱の蓋をひっかく力も無くなって狭いところで死ぬ…と思うと怖い以上に私の想像力やべえなって話だった

⑤死者の復讐
エンドロール直前で冒頭に出てきた白いバンの内部が映されます。
そこには家族3人の写真、練炭、腐敗した死体が2つ…。
つまり今まで対峙していたさくらの父母は既に…ということ。
さすがにぞっとしたけど、娘を奪われた深い憎しみは死してなお消えないものだよなあと悲しくなりました。
イジメ、ダメ、ゼッタイ。

とここまでが映画の内容。
なんかもうこの映画を義務教育課程に組み込んだらまじでいじめが消えると思う。
エエイ聞け…ッ。お前がいじめてゐる子にも家族がいるのだぞ…。その家族の前でも本人いじめられるんか…エェッ…。どっちにしても死ぬぞ…って夢野久作風に言ってあげたい。

「映画の」とわざわざ書いたのは小説だと更にもう一つこの物語の真実が語られているからで。
これは未読なんだけどネタバレを見て、さくらの両親が実は死んでいたことが分かった時よりも戦慄させられました。
映画でも小説でも目が覚めるところからまゆのエピソードが始まります。
映画ではまゆの目覚めのシーンは一回のみ。
小説だと箱に閉じ込められた夢を見て起床、そして最後の生き埋めも最終的に夢として処理され、また箱に閉じ込められた夢から覚める。
つまりまゆも既にもう死んでいて、永遠に恐怖と絶望を味わう無限の地獄に堕ちていたのだった…というのが小説版のラストだそうです。
正直怖すぎワロタって感想しか出てこなかった。

一人暮らしのお映画生活クゥッソ快適ィ~!ハァイ私貴族ゥ~!と宮野真守ばりのテンションで裸で小躍りしながらチョイスした映画だっただけにダメージでか美ちゃんでしたわ(震え)
ゆうき

ゆうき