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イレイザーヘッドのfamyxdyのレビュー・感想・評価

イレイザーヘッド(1976年製作の映画)
3.5
全てが意味不明な世界ではなく、真実味のある表現と普遍性のある表現がいくつかある。
それが存在することが、描写されているイメージの独創性を強めていると思った。

ひとつは子育ての描写が実はリアルでは?とおもった。
一見、おどろおどろしく描かれている子育ての描写だが、新生児の
育児と思ってみてみると意外にその通りとだ思った。これは個人的な経験の差異によって同意いただけるかわかれると思うけども..。
うちの子は生後2ヵ月ごろまで夜は抱っこしていないと全く寝られない子だった。
だから、僕と妻で、1,2時間ごとに抱っこを交代しながら朝まで過ごしていた。
昼は昼でやることがたくさんあるから慢性的に寝不足だ。慢性的に寝不足な状態の夜中、世界は割とあんな感じに見える。
妻がヒステリーになり逃げだしてしまうのも、夫が育児に参加していなければ、不思議なことではないと思った。子によるが、育児は大人ひとりでやれるものではない。
家を出ていきつつも、「ちゃんと世話してよね」と気に掛けるセリフに現実味を感じる。
また、突然顔にぼつぼつができるシーン。乳児性湿疹やアトピーなど、赤ちゃんの場合代謝が激しいので突然発症する。(そして突然治る。)
「病気か!?」と親が驚くところまで含めてリアルだなと感じた。出かけようとするとピーピーなくところもリアルである。一人で赤ちゃんをみているとトイレも行けない。
そしてなによりあの赤ちゃんのビジュアル。新生児って割とあんな感じだよなあと思ってしまった。(なのでかわいいとさえ思った。)
正直、生後数か月は親に全く余裕がないので「かわいい」となかなか思えない。それよりも何とか死なないようにしなければならない不安感が強い。
その不安感や、上に書いたような精神的/肉体的疲労が投影されているビジュアルとしたら、なんとリアルのあることか。(頭の形が長細いのもリアル。普通分娩だったのだね。)

調べてみると、デビッド・リンチは若くして子供ができたそう。そして離婚も繰り返している。時代もあるが、恐らく育児、そしてそれを通した妻との関係はうまくいかなかったのかもしれない。
そうした経験が実が写実的でさえあるほど画面上に描かれれいるのかもしれない。

もう一つ、普遍性があると感じたことは、ショットの美しさである。
主に、美術やメイク、VFX等で独自のカオスなビジュアルイメージを作り上げている。それに加えて、支離滅裂、意味不明な演技や
物語もある。だが一方で、構図は常に「ここしかない」というところにカメラを置いており圧倒的に見ていられる。
ここに、デヴィッド・リンチの映画センスを感じた。この映画がただ不快なだけでない大きな要素は、このショットの美しさにあると思う。
本当に不快な、見てられない映画というものは、グロテスクや悪趣味なものなど映っているは問題ではない。
映っているものではなく、根源的にセンスのない不快なショットの連続が続く映画が不快だと思う。

そうした視点から考えると、この映画は美しいショットに満ちており、大前提美しい映画として成り立っている。
その上にデヴィッド・リンチの作り上げたカオスが世界が広がっている。

ただもちろん、意味は解らなかった。頭はおかしいと思う!
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