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ラスト、コーションのfernのレビュー・感想・評価

ラスト、コーション(2007年製作の映画)
4.1
イーを演じるトニー.レオンとチアチーを演じるこれがデビュー作のタン.ウェイの緊張感のある演技が、心に残りました。

2人とも目の演技が凄いです、そして仕草もいい。

抗日のスパイを見つけ出して処刑する、と言う国を売るような職務に就くイーは、常に心に鬱屈を抱えていて孤独で寡黙。

それが真実としてトニーレオンの身体から流れ出てくるようです。

本当は学友クァンを愛しているのに任務からイーに近づき誘惑するこれまた切なすぎるチアチーを演じるタン.ウェイも美しく激しく哀しい。

この映画では、激しい性行為のシーンが幾度か出てきます。

このシーンは賛否両論あるようですが、私的にはこれらのシーンがないと最後のイーの底なし沼のような孤独感を十分に描き切れなかったと思うのでありです。

それに、全くエロティックには感じません。
行為の最中の挑むようなチアチーのまなざし、快楽であるはずなのに苦痛に満ちたイーの顔。
深い心の空洞を埋め合いたい激しい格闘技のような行為に見えました。

幾つか印象的な場面がありましたが

個人的には、イーの心を確かめるかのようにチアチーが「香港に帰る」とそれとなくイーに知らせ
部屋に入って来たイーに「嫌いよ」とつぶやきます。
イーが「君を信じている、他の誰のことも長い間信じなかったけど、君のことは信じている、それでも香港に帰るのか。」とチアチーに告白する場面が好きです。

すがるような愛のこもったイーの目がステキです。


チアチーに指輪を送る時のイーの彼女を信じ切っている優しい顔もいいです。
このままでは、イーは抗日の仲間に殺されてしまう、でもそのために命を懸けていままでやってきた、逡巡するチアチーの一連の顔の表情も捨てがたいです。

チアチーの腋毛もリアリティを感じさせて良かったです。
監督にその時代の女性は処理していなかったので処理しないで、と言われたそうです。

戦争によって翻弄された二人、虚無感と孤独にあえぐ二人は極限状態だからこそ求めあった、そうするしかなかった、二人は戦争の被害者でもあったのだと思いました。

映画『愛の嵐』を思い出しました。
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