たかだんごむし

姿三四郎のたかだんごむしのレビュー・感想・評価

姿三四郎(1943年製作の映画)
3.5
黒澤明の美的センスの良さ、同時にそれに対するこだわりに導入で気付いて衝撃を受けたら、後はずっとそればっかり見てしまっていた。黒澤にとっては、照明も美術も、何もかもがカメラに入る画の黄金比を整えるための要素に過ぎない。1カット目から、あまりにも画が見易くて、1コマ1コマがプロが撮った美しい写真の連続のようで、無条件に見入ってしまう。あれ、ここ少し比率ズレてるなと思えば、必ずカメラが移動するか、人物が動くか入ってくるかして、最終的に完璧なバランスになる。この映画でのカメラワークはほとんどが、平面上、立体上、明暗の黄金比を守る目的で構成されているのが見て分かる。同様に、会話のリズムもこの時代にしては聞きやすく、音の間まで確実に計算して演出してる。そして、印象付けたい所では、敢えてこのバランスを崩して客に無意識に感じさせる手法。姿三四郎は女に弱い。この単純なストーリーが面白くなったのは、柔術で負けなしの彼が、勝つ度に女を傷つけている事に気付き、その表情に打たれ弱くなるから。トントン進んでいく話に、進むことの重さを持たせて、感動に導いている。シンプルだが、よく効いている。何より凄いのは、黒澤がこういったよくある映画の生みの親だということと、この作品が初監督(脚本)だということ。凄まじく天才。