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レッド・ドラゴンのsmalltalkのレビュー・感想・評価

レッド・ドラゴン(2002年製作の映画)
3.4
サイコスリラー。
『羊たちの沈黙』、『ハンニバル』に続く第3作目。

レクター教授は、第1、2作と同様のアンソニー・ホプキンス。

また第1作目と同様にレクター教授は、脇役となる。

相変わらずアンソニー・ホプキンスの存在感は圧倒的だった。

またストーリー展開も第1作と同形式だった。

レクター教授のヒントを元に、ウイリアム元捜査官が猟奇的殺人事件を捜査していく。

こちらのストーリー展開の方が好きなタイプ。

第2作目よりレクター教授のキャラクターが、より活きているように感じた。

更に今作は、猟奇殺人犯の内面までに迫っていた。


以下ネタバレ有





今回の主要な役のレイフ・ファインズが演じる殺人犯も、その狂気さだけでなく、どうしてそうならざるを得ないかとの過程と苦悩まで演じていて見事だった。

またレクター教授がどうやって捕まったのかもストーリーもあり面白かった。

このシリーズの主人公は、単純なヒーローでは無く、必ず闇を理解している。

エドワード・ノートン演じるグレアム元FBI捜査官も同様だ。

レクター教授と会話が出来るのは、つまりレクター教授を理解出来るのは、知的で闇を知っていることが最低条件だ。

ニーチェの例の有名な
『怪物と戦う者は、その過程で自分自身も怪物になることのないように気をつけなくてはならない。
深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ。』
を思い出した。

グレアム元捜査官も同じくその『深淵を覗く』ことが出来る者だ。

しかし、『覗』き続けはしない。
だからこそ「元」FBI捜査官なのだ。

レクター教授を捕まえるほどの才能がありながら、ギリギリのところで踏み止まっている感じがする。

レクター教授は、その異常さ故に孤独だ。

だから、自分を理解してもらえる可能性があるグレアム元捜査官に、レクター教授は執着する。

レクター教授は、グレアム元捜査官に『覗』き続けることを強いようとする。

グレアム元捜査官の家族を狙ったのはそういうことなのでは。

家族を殺されたなら、その原因になったレクター教授に向き合わざるを得ないからだ。

しかし、グレアム元捜査官の家族は助かった。

レクター教授からの熱烈なラブコールがあっても事件が解決したら、グレアム元捜査官はレクター教授から離れていく。

グレアム元捜査官が、家族と共に大海原でヨットを操作しているシーンが象徴していたと思う。

ここが1、2作目のクラリス捜査官との違いだ。

クラリス捜査官はその正義感と闇を抱えるが故に、レクター教授と関わり『深淵を覗』き続けざるを得ない。

またグレアム元捜査官は家族という大切なものがある。

クラリス捜査官には、自分より大切なものが無く、仕事が唯一大事で、それ故にレクター教授から目を逸らすことが出来ない。

だからこそ、レクター教授にあれ程愛されたのでは無いだろうか?

この映画のラストは、1作目と繋がる終わりかただった。

またそれは、レクター教授が自分に向き合ってもらうパートナーを得る、微かな希望へと繋がるラストだったように思った。
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