光る切実な犬

シンドラーのリストの光る切実な犬のレビュー・感想・評価

シンドラーのリスト(1993年製作の映画)
4.7
ポーランドに行くので、観た。

どんな言葉で何を言っても軽く、虚しく思えるけど、観た直後に思うことを記録する。

金や酒、女やダイヤなどが賄賂として軍の人と取引されていた。商人がある程度の軍人より強い立場になる場面が印象的で、それは救いのようにも感じた。
訳の分からない正義や人を虐殺できてしまう主義主張より、貨幣に換算できる価値で人が動く方がよっぽどましで健全に思えるし、道理がわかるからだ。
戦時中の軍人でも、その時の利害を考えたら、経済合理性に沿っている(ようにみえる)動きをすると安心するというか…

とはいえ「戦争が人の最悪の面を引き出す」場面は苦しかった。家畜のように、裸にされ貨車で運搬される人間。なんのルールもなく気まぐれに撃ち殺すゲート、その音をちょっと迷惑そうにする、寝室にいる女。暑い貨車の中で水を欲しがるユダヤ人たちに、ホースで水をかけるシンドラーに対して「残酷だ」と笑う軍人たち。この映画で残酷という台詞はここでしか出なかった気がする。
「戦時中でなければゲートもいい奴だ。」とシンドラーは言っていた。

終戦後、軍人とユダヤ人が工場で一堂に会する場面、あそこで人はどう動くのか全く想像付かなかった。ヒトラー万歳!と撃ち殺すのかと思いきや、あっさり退出する軍人たちの行動原理が気になる。

今ガザで起きてることに目を向けられずにいる。もう過去に起きて既にジャッジが下された出来事は見れるのは何故だろう。その事に少し罪悪感もある。
光る切実な犬

光る切実な犬