うめ

ヘドウィグ・アンド・アングリーインチのうめのレビュー・感想・評価

3.8
 昨年のトニー賞授賞式でニール・パトリック・ハリスがヘドウィグ役でパフォーマンスをしているのを見て、最高にかっこよくて気になっていた「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」。もとはミュージカルなのだが、今作はその映画化である。
 ミュージカルの原作を手掛けたジョン・キャメロン・ミッチェルがそのまま今作の監督・脚本・主演をしているし、もちろん使用されている楽曲もそのままである。なので、パフォーマンスは慣れたもの。映像化してもやっぱりかっこよかった。そもそも楽曲が良いし、それに加えて性転換手術に失敗して股間に1インチの怒り(アングリーインチ)という傷跡を残してしまったというちょっと奇抜な設定のヘドウィグをジョン・キャメロン・ミッチェルが振り切って、クレイジーに演じている。
 だが、ただクレイジーだけではない。手術後に夫と離婚し、さらにその後、音楽で繋がっていたトミーには拒絶をされ、ヘドウィグが制作した曲も盗まれ…愛に飢えた末の哀しみもヘドウィグは抱えている。作中には男と女はもともと一つの身体として生きていたが、神によって二つに分けられたという話を歌にした「愛の起源」という曲が登場するが、この曲が今作のテーマの中心をなしている。権力と自由、男と女、怒りと哀しみ…まさに表裏一体なのだ。ヘドウィグはアングリーインチを抱えて、裏切られたトミーを追って、全米ツアーの旅で歌う。このヘドウィグの姿はおそらくどんな人にも当てはまるだろう。皆、「自分の片割れ」を探しているのだ。ヘドウィグはその片割れ探しの旅の果てに、何を見つけたのか。どんな自分を見つけたのか。それは是非、本編で。
 ところでトミー役のマイケル・ピット、「ボードウォーク・エンパイア 欲望の街」で初めて観たが…まさか若い頃に今作で出演しているとは!いやいや、ちょっと少年っぽさが残っていて素敵。
 はぁ〜、ミュージカルの「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」本場で見たい!!
 
うめ

うめ