結婚詐欺のニュースなんかを見ると、何故そんな幼稚な嘘に騙されるのだろうかと思ってしまう。
詐欺なんて傍から見れば滑稽なものなのである。
けれど第三者から見ればまぬけでも、騙された人間にはそれが真実と感じられたのだろう。クヒオという男を信じたい、という思いが彼女たちをそうさせたのだと感じる。
だがクヒオの嘘を見抜く人間が現れる。
彼の嘘を見抜くことのできる人間、それはクヒオと同様に“嘘”の世界で生きる人間たちなのである。
詐欺師であるクヒオが根っからの悪人かどうかはわからない。
彼が自らのルーツを語るシーンはペーソスに溢れている。
哀しい過去に立ち向かうために、嘘の世界へと逃げ込んだクヒオ。けれどだからと言って詐欺を働くことが正当化されるわけはない。
詐欺は犯罪で、だがそんなクヒオ生み出した背景も哀しい。
吉田大八は詐欺師を正当化するわけでもなく、ただおもしろく描くわけでもなく、絶妙な距離感、間合いでこのクヒオと対峙しているように思える。
観終わった後のなんとも言えない後味。
複雑な人生の味わいを感じさせてくれる作品。
ちなみにそれほど登場シーンは中村優子の色っぽさが凄まじかった。