COZY922

いまを生きるのCOZY922のレビュー・感想・評価

いまを生きる(1989年製作の映画)
3.6
全寮制で進学率も高い名門男子校を舞台とした映画。ロビンウィリアムズ主演のヒューマンドラマです。

型通り、教科書通りの考え方ではない自由な発想。親のいいなりに 敷かれたレールを歩むのではなく自立的な意志による人生の選択。キーティング先生の教えは、お仕着せの制約から心を解き放ち、個性と自由を尊重しようとするもの。教科書のみでは決して学べないことを教えたり気付かせるものだと思う。

一方、ニールの父親のほうは息子の気持ちや希望に耳を傾けず、一方的かつ強引に息子に進むべき道を示し命令する。こんな親はあり得ないしニールのあの選択の直接的な原因は間違いなく家庭側にあると腹が立つ一方で、人生の師のような理想的な先生とヒール役の父親という構図に 何かモヤモヤと引っ掛かるものを感じてしまったのは私だけだろうか?

強くしなやかな部分と多感で繊細な脆さが同居する10代。理想や夢を追いながら 何が自分らしさなのかを見つけることはとても大切なこと。だけど、夢だけでは生きていけない現実社会が目の前に横たわっていることも少なからず考える必要はあるはず。

先生と少年の親の思想は真逆で、どちらが良いとか悪いとか杓子定規で測れるものでもないと思った。夢の実現や将来に向けた計画や意思を実践に移すのには、リスクや障害はつきもので、それらとどう折り合いをつけながら夢を追うか、バランス感と状況対応力が求められる。教科書外のことを教えるのならばそれにより芽生えた自立心の先にあるリスクにも触れる必要があったのではないだろうか・・。親の言動も息子のことを思えばこそだし、ならば親としてとことん話を聞いてやることはできなかったのか。先生もまた子供たちの輝かしい将来を願ってやまなかったはずだし、ニールもそんなに心が脆弱なようには見えなかっただけに、その選択が哀しい。

問題提起したまま明確な解が示されない終わり方にはカタルシスを感じることはなかったが、観る側に深く考えを促す力のある作品だった。10代の高校生はもちろん、既に成人し特定の道を歩み始めた人や、親の立場にある人など、幅広い世代へのメッセージを感じる映画。
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