「映像でここまで惹きつけられる」
古い作品だけど、今年観た中ではNo.1になるかな。ストーリーも演出も撮影もとんでもなくいいね!
やかましく鳴り響くパトカーのサイレン、犬の鳴き声、ビルの窓からにゅっと出る拳銃を持った腕、横たわる死体、駆けつける警官、2階から飛び降りる若者。
これらが断続的に切り替わるカットになっており、だんだん殺人事件だと連想するのを狙ったような、無機質で不安に苛まれるオープニングに当たり前に惹きこまれた。
医師と小説家の妻の夫婦、カメラマンと不良少女、小説家の妻の元彼、医師と懇意の刑事が主な登場人物。
不良少女のいたずら電話がきっかけで、無関係だった各々が交差していくことで、人生が崩壊していく、といったストーリー。
ストーリーは伏線をはらみ、きちっと回収するとともに、そうくるか?っていうラストは見事!
けれどそれ以上に、映画全体を低めのコントラストや独特なカット割りで構成し、会話が少なく映像からストーリーを連想せざる得ない表現法によって、全体を不穏な空気感が包んでいる。
そして何より、エドワード・ヤン監督が見せてくれたのは「不吉な予兆」の表現だと思う。
本作で言えば、「風」「水滴の音」「電話のベル」なんかがそうだと思う。
特に「風」については、オープニングから扇風機が出てくるし(空き缶の転がる音と合わせたここの映像はカッコいいと思う)、風に靡くカーテン、刑事の家の扇風機、その他全てにおいて何かが起こる「予兆」である。
ちなみに、風に靡くカーテンと見て真っ先に思ったのは黒沢清監督の映画も悪い予兆として描いてたってこと。こっちのが古いから黒沢監督がオマージュしたのかな?
ラストは「現実と小説は違う」と夫を罵っていたのに、虚構が現実となった為、妻はああなったのでしょう。このワンシーンが1番現実めいてて最高です!
2回目は更に面白さが増す作品です。
……….暗室の窓を開け、パタパタと風に靡く少女の写真たち。少女の不安定さを意図したものなのか?
そのシーンはアートというしかない