恐怖分子の作品情報・感想・評価

「恐怖分子」に投稿された感想・評価

aibaba

aibabaの感想・評価

4.8
淡々と何かに感染していくような映画で、その感染速度は指数関数的に増大していくイメージ。だから序盤はすごく静かでゆっくりとした展開なのだけれど、退屈せずに見れたのは画の見せ方やリズムが独特で、今までに見たことないような物だったから。

奇抜というわけでもなく、カメラの焦点が人物の顔だけでなく、そこに置かれている物だったり、空間だったり、或いはそこではない別の空間を映し出したり、そして急にものすごく魅力的なバストアップ姿が現れたり...すごく不思議な気持ちにさせれられた。

職業柄か、古い電話機や後ろに見える椅子、何気なく使われている素敵な照明といった物にまで関心がいってしまった。

人と人は見えない何かで影響し合っている。けれど、タイトルにもあるように実は分子レベルの小さな何かが存在していて、あまりにも小さい些細なものだから気づかない。ただ無意識的には感じていて、その人の感情や行動に影響を与えている。

序盤、中盤に対して終盤の見え方が変わったように思う。急に動的になったような。特に、早朝に小学生がかけていくシーンで何かが始まる気配がしてゾクっとした。

誰かと出会い、別れ、死んでいく。この世の無常観を独自の見せ方で映し出そうとしたのだと思う。


訳も分からず見終えた後もしばらく涙が止まらなかった。

本当に傑作。
秋

秋の感想・評価

4.8

このレビューはネタバレを含みます

前半の積み上げが少し単調に感じてしまったが大事な積み上げ。
後半からラストにかけてはこれぞ映画だった。
疑い・不安・裏切りなどの恐怖分子を振り撒いていないか?自分自身にその分子が降りかかってきたらどうするか?
個人的に今観るべき映画であり観たくなかった映画。
Iri17

Iri17の感想・評価

4.7
孤独、閉塞感、不安、社会と人生のどうしようもなさ、社会の暗部と人間の内面をここまでセリフに頼らず映像のみで表現できる人は、僕は3人しかいないと思っている。キューブリック、タルコフスキー、そしてこの映画の監督エドワード・ヤンだ。

今作『恐怖分子』も、この次に彼が撮る作品『牯嶺街少年殺人事件』も、セリフを極限まで排除し、徹底的に映像技法と俳優の演技によって訴えかける。そしてその素晴らしい演出は言葉より雄弁に僕たちに物語る。
台湾社会の閉塞感と絶望感を描いているが、国も時代も超えた普遍性がある。それは彼の作品が、絶望に陥った人間の心情と社会の息詰まる空気感を深層的に絡め会いながら描いているからだろう。台湾でも、日本でも、アメリカでも変わらない人間の絶望感と社会の閉塞感を彼は映像で語る。

まさに無音の叫び。これこそ彼のみが描ける唯一無二の声だ。誰もが叫びたい気持ちを抑えて日々を生きている。彼の映画はその叫びを僕らの代わりに叫んでくれる、寄り添ってくれる。世界中の人に分け隔てなく寄り添ってくれるそんな映画は彼にしか撮れない。
よる

よるの感想・評価

5.0
エドワード・ヤンの映画にはいつも言えることだけど、どのシーンを切り取っても完璧な構図。ため息の出るような倦怠感とそれをつんざぐ電話のベル。
しおり

しおりの感想・評価

4.0
終盤で出てきたやかんの柄が昔家にあった丸いタッパーと同じだった(いちごと葉っぱの柄)
ここまで徹底して説明を省く映画監督も珍しいと思う。表象されるものを視聴者が自律的に捉えながら想像ができるので信頼できる。
ヤン氏の映像の素晴らしさは言うまでもなく驚いたのは精緻なプロットだ。いたずら電話がきっかけで、複数の人間関係が同時に、動いていく仕掛けが巧妙だった。
ヤン作品にでてくる人物として、ヒリヒリした空気を持ち殺伐としていて、孤独な悲しい眼をしている女性が多い気がする。目立つわけではないが存在感を放ち魅力がある。
また海外の作品だとあまり目につかないが、今回出演している役者の演技が素晴らしいと思った。特に大好きな映画監督だけれどこの作品と出会って余計すきになりました。
都会に住む人の何人かにスポット当て、社会状況やら都市生活の闇的なものを浮かび上がらせる群像劇な映画ってかなりの本数あるはずで、クラッシュ(クローネンバーグが監督じゃない方)みたいにヒットした映画も多い。

要はもはやジャンル映画と言ってもいいぐらい手法や見せ方なんかが様式化されてるとこあるんだけど、奇才のエドワード・ヤンが撮ると、観たこともない独特の構図とリズムを持った異様な雰囲気の映画になる。

些細なことがきっかけで大事になり、本来、結びつくはずもない人達が出合い、個々の社会階層の違いや、考え方の違いが浮彫りなる。これ自体はよくある展開なんだけど、これに出てくる人達、みんな、立場や思いは違うんだけど、みんな妙に生きることに淡白で疲れた感じ。それでいて神経症っぽくイラついてる。
一人一人の背景や生活風景とかをリアルに詳細に画き分けてて、箇条書きにして見ればみんな別人なのに、この生きる力のなさ、醒めた諦念、懈怠、焦燥の感触が同質で1つの魂が分裂して散った、タイトルに掛けるわけじゃないけど分子達に見える。
うまく言語化できないけど、その不気味な同質性から涌き出る空気感がやたらと湿度が高い。ジメジメした閉塞感が画面を覆いひたすらダウナーになる。

しかし、何でこの人達こんなに疲弊し沈みきってんだろう?て疑問が浮かぶ。擬人化なのかも知れないと思った。
誰しも望むような環境や愛情、社会的地位なんて得られない。そして、それはもう取り返しがつかないと分かってる。その不全感と共に生きなければならないって鬱屈の。

テンポも遅いし湿度も高い、見やすいタイプじゃないんだけど、間と構図の強力な個性と雰囲気、意外とミステリーとして出来のいいアウトラインが絶妙に絡み合って飽きることない観れてしまう不思議な映画。

登場人物に小説家がいるんだけど、その小説家の作品の寸評が印象的だった。
「生活感があるけど、恐ろしく屈折してる」
これ、まんま、この映画のことじゃんかよってなった😂
KH

KHの感想・評価

3.9

このレビューはネタバレを含みます

心地よい心のざわめき

3組の登場人物たちが起こす行動が意図せぬところで連鎖を起こしていく群像劇

人間誰しも闇の部分がある。
それを補うように関係を持ち、互いに高めあったり落ちて行ったりする。
それは夫婦であったり、上司部下であったり、犯罪仲間であったり。
この映画は人間の醜い部分がうつされている。
密告であったり、売春であったり、不倫であったり。
でも、それ以上にラストシーンの前半は観客側の望む醜い心が理想とする展開であり、それを見越して後半監督はほくそ笑んでいるのかもしれない。
真っ白い壁に映える、不謹慎なほどきれいな鮮血は、湯船に流れ込むどす黒い赤と対比しなぜか清々しいラストシーンに思えた。
tsubame737

tsubame737の感想・評価

3.7

このレビューはネタバレを含みます

昨年観賞したクーリンチェ少年殺人事件に続いて、二本目のエドワード・ヤン監督作。

クーリンチェ少年殺人事件と似ているのは、出来事自体を撮さずに、音と出来事から少し外れた場所を撮すことで出来事を示すこと。
何も起きない室内の撮影自体が多いのは、この監督の特徴なのだろう。

もう一つは、男の悲しい一人相撲。いくら頑張っても相手の望むものでないなら、相手は好きになってくれないし、むしろ面倒なだけ。
自殺で終わらせるだけ、クーリンチェの主人公よりかは幾分かまし。しかし、出世できないとは言え、妻に逃げられたとは言え、幾らでも生きる道はあった。自殺の選択が彼の哀しみを協調する。

この奥さんも「ここでは無いどこか」を探して、現状に満足できない。小説の題材も自分の周囲の事ばかりでは、ネタがすぐに枯渇するだろう。
hotamilk

hotamilkの感想・評価

4.0
人間と言うより街を、世界を映してる感じ
空気も風も、光も
総てが繊細で美しい
天才の仕業だ…
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