「でも彼らの頭の中は？何を考えてる？」
「何も考えてない」
「そのことに確信が？」
「他に可能性なんてない」
「とても静かだ」
「この世界で彼のために何が？」
「あなたが」
「目を閉じるのが怖い」
「大丈夫
目を覚ましたら明日の朝だ
約束する」
「彼は気づいてる
お父さんは君のことを分かってるよ」
「気分はどうだ？」
「気分？」
「今の気分だよ どう感じてる？」
「両親は死に女房は施設行き
せがれは西海岸へ行って行方不明
そして俺は老人
ペテンにでもかかった気分だ」
「ただ散歩がしたいだけなんです
あなたたちと同じように
目を覚ましたのは人間だ 物じゃない」
「これは何だ？僕はどうなる？
カメラだ！カメラを！！」
「こんなの映せない」
「映せ！映せ！映せ！
学べ！学べ！学べ！
僕のために！学べ！」
「友達とダンスに行った
それ以外は何もないわ」
「それは良かった
僕は一度も経験したことがない
もう会うのはやめよう
さようなら」
「こんなの僕じゃない
ほんとうの僕じゃない」
「あの子が生まれてきた時
子供が健康に産まれてくることが
どれだけ幸福なことかなんて
考えもしなかった
でも病気になってからは
なぜこんな不幸が？と
あの子は苦しんでる
助けてよ」
「君は僕を親切な人と？
命を与えて奪うのが親切か？」
「命は与えられ奪われるものよ」
「だがつらい」
「それはあなたが優しいからよ
彼の友達だからよ」
