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パリ、ジュテームのyuumiのレビュー・感想・評価

パリ、ジュテーム(2006年製作の映画)
3.6
初めて訪れた時から、
パリは私にとって特別な街で
何にもかえがたく、美しく豊かで
いつでも・いつまでも訪れたい所となった。

人生で、そんなきらきらと輝き、
いつだって私を誘って手をこまねく街を、
一つ見つけられたのは幸せなことだと思う。

これは、そんなパリを舞台にした
オムニバスのストーリーから成る映画。

レビューで見かけた方の、
一度鑑賞してから、何年か後に
また、数年前の自分の感想と
照らし合わせながら感想を再度
書く、というものが素敵だったので、
わたしも現在22歳の感性や感じ方を基に、それぞれのストーリーの感想を綴っていきたいと思う。

1. MONTMARTRE
Bruno Pordalydès

「車の中が僕の世界だ」と嘯く青年が、偶然街で、倒れた女性を目にしー…

・モンマルトルの街角では、こんな風に始まる恋もあるのか。
こんな風にして恋は始まるのか。

車を運転しつつ、周囲に悪態を吐く
男性、実はとても優しい心根なのだと思う。
それは、偶然目にした倒れた女性を
すぐに助けに行ったり、
車内で穏やかで優雅なピアノ曲を
バックミュージックとしていたり、
一つ一つの言葉や仕草であったり。
そんな彼の、少しの外との齟齬が
女性との出会いを通じて埋まっていくことを予感させるような、
静かな恋の予感のする話。


2. QUAIS SEINE
Gurinder Chadha

セーヌ河沿岸で男の子は、ヘジャブを被るムスリムの女性に恋に落ち、彼女の跡をつけていく。

・現代のパリっ子の、女性のナショナリティに関する素の考えが出ている所が興味深かった。
タイ人、ゲルマン系の女性には軽々しく声をかける一方、
アラブ人と思われる女性に声をかけることは「いかれた」こととみなされる。

でも、「なぜ強制されていると決めつけるのか」や、
「ヒジャブを被ると自信が出るの、だから被っている」との
女性の主張は至極もっともなことだと思う。

気になって彼女の跡をつけて
モスクまでいっちゃう、
なんだか可愛らしい男の子の恋が叶うといいなあ


3.LE MARIS
Gas Van Sant

工房を訪れた男性は、そこで働く若い職人見習いの男性に、一目で強烈に惹かれてしまう。

・気になっていたガス・ヴァン・サント監督の初めての作品。
言葉のトリックが面白いと感じた。
一方が一方の母国語を誤解し、
ひたすらに愛の言葉(それも特別ロマンチック)で畳み掛けるも、
その実、伝わった所は少ない。
それは、これからの2人のすれ違いが多いことを示唆しているようにも見える。

ただ、あんな風に浴びせるに
畳み掛けるように、愛のことばが口を突いて出てくるフランス人すごい!と思った


4.TUILERIE
Joel & Ethan Coen

観光客の男性が体験した、駅でのお話

・うーん、気の毒。
もしこんな体験をしたら、
まず間違いなくパリという街を
何かとてつもなく非人道的で
無秩序で、恐ろしいものに考えて
2度と行きたいと思わなくなるだろう。

文化の街としてのパリと、その実情。
観光客がその街を好きになるかどうかは、案外簡単に変わったりする。
ただ、1人の観光客がひどく不幸な目に遭った時も、
モナリザは、ただ静かに微笑んでいる。


5.LOIN DU 16e
Walter Sattes & Daniela Thomas


8. VASTILLE
Isabel Coixet

長年連れ添った妻に別れを切り出そうとするも、彼女から驚きの告白をされた夫の話。

・お涙必須の号泣話になるような、
そんな話さえも、フランス流のウェットでこんなおしゃれな話にしてしまう。
ただ、結末はやはり悲しい。

アメリを思い出すような、そんな演出。


10.TOUR EIFFEL
Sylvain Chomet

僕の両親は、パントマイムをしている。留置所で出逢ったんだって。

・パリの何が好きって、こういう所なんだと思う。
美しい街の中で、人々が生活をしているところ。
特別きれいに生きなくても、はみ出しても、それでも人生が豊かできれいで、何か特別価値のあるものに思われるところ。

カフェでの双子や、パントマイムの男性の一挙一動、画面の彩度や切り取り方が、すごく可愛い
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