たくみ

鋼の錬金術師 嘆きの丘(ミロス)の聖なる星のたくみのレビュー・感想・評価

2.0

何年ぶりに観たろう。
それこそBlu-ray発売された頃以来かも。

シーン単位ではよく覚えてるんだけど、全体の作りとしてはちょっとキビシイと言うか…
アニメーションはいいんです、さすがBONESってかんじ。

ただ、脚本がチープすぎる…
何でこうも…テレビの延長みたいな構成になっちゃうんだ…
簡単に言っちゃうと
アクション→会話(説明)の繰り返しで、説明シーンに入ると完全に映画の推進力が止まってしまってこちらの気持ちも途切れてしまう。
と言うのも、アクションシーンは超絶アニメーションの暴力みたいに情熱的なのに、会話シーンになるとTVアニメみたいに凡庸な、ただ突っ立ってるだけだったり座ってるだけで口の絵ばかり動いてるだけの本当に“説明”だけのシーンになってしまってて、アクションパートとのギャップが極端すぎる。
どんだけ大変なことが後ろで起こってても、「はい、今は会話シーンです。」って無慈悲に突き放される感じ。
戦闘シーンですらひたすら喋りまくりながら闘ってるもんなぁ…

クライマックスは指輪物語とスターウォーズep3“みたいな”、オマージュと言うにはあまりにも唐突で軽率な展開。
まぁもともと“賢者の石”自体に力の指輪的な要素があるのは事実だけど。

映画なのに…
せっかくの映画なのに、撮影も含めて何で映画らしい事をしてくれないんだ…
アニメーションという表現である事に意義があるのはもちろん分かっているけど、“映画”という媒体を使ってる以上、ビジュアルや(ハガレンという)ブランドに頼るだけじゃなく、脚本という背骨をしっかり練り上げて欲しい。
最後の最後にいたってはもう自分の心境を全部ペラペラ台詞で喋っちゃうんだもの…
“アニメーション”というアドバンテージを全く活かせてないし、映画という手法も全く使いこなせていない。
久しぶりに観てちょっと残念な気持ちになってしまった。

自分自身、昔とは“映画”の観方が決定的に変わってるから、好きだった映画を今観返してこういう批評的なこと考えちゃうこともなんかなぁ…って思っちゃったりもする…

絵柄が“ジブリっぽい”って評価を散見するけど、え???ってなった…
この手描き感な柔らかいタッチと、感情の動きに呼応して逆立つ髪の表現を見てそう言っているならそれは全く本質の無い表面的な評価で、“それっぽく”作ってる人の思うツボだ。
個人的には本作にそういう意図は感じられなかったけど。
自分では「ジブリっぽい」とは少しも感じなかったのでそういう評価の声があるのには少し驚いた。
むしろジブリ映画の絵のタッチを改めてよく見てほしい。
原画の線を忠実に捉え、ただの綺麗な線ではなく“美しい”線、線一本レベルにまで芸術性のあるジブリ映画に対して、小手先の手描き感では到底到達できるわけがない。

しかし…ほんと日本のアニメはよく喋る…
これは“作家性”なんてもんじゃなくて、低予算でどうにかこうにかやりくりする為の最終手段の“説明セリフ”を常時行使してるイメージ。
TVアニメの作り方のまま映画を作ってしまってる。
コレは本当に良くない。

もちろん全てではない。
映画シーンがメインのクリエイターはちゃんと出来ている人は多い。
情感描写、“間”、構成演出、わかってる人はちゃんとやってる。
観比べれば必ず分かる。
たくみ

たくみ