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パリ、夜は眠らない。のohshimaのレビュー・感想・評価

パリ、夜は眠らない。(1990年製作の映画)
5.0
ボコボコに殴られて呆然自失でした。自分が現代においてマジョリティを占める異性関係の中でロールを見出せない敗者だからといって安易にゲイカルチャーに関心を示したり肯定的な姿勢を表明したりするのはすげえ安易だし冒涜以外の何者でもないとは思うんですがそれでも心惹かれてしまいます。
なぜ着飾るのか、なぜ演じるのか、なぜ踊るのか、「ボール」を中心とした文化の諸要素からセクシャリティに関係なく現代人が抱える根源的な欲望が浮き彫りになってると思います。冷静に自己を見つめながらも虚栄心や上昇志向を隠そうとしない語り口と、一見何も得るものなどない一夜の夢、非日常の中に全てを投げ捨てるようなひたむきさが歪ながらも美しいです。
中盤ヴォーギングにクローズアップしてからの熱量がすごい。最近では一般化、競技化した結果見えにくくなっているルーツやカルチャーにおける役割が前半で丁寧に拾い上げられているおかげで熱気がさらにダイレクトに伝わってくる。特にウィリー・ニンジャのムーヴは30年経っても全く色褪せない優美さと鋭利さで素晴らしい。
あーでもなんでしょうね見終わったあとのこの空虚な感じ、やりきれない。
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