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メイク・アップ/メイクアップ 狂気の3Pのkakakaのレビュー・感想・評価

4.2
イーライ・ロスが本作をリメイクしたのが「ノック・ノック」。
比較して見ると、主人公の職業やレーコード収集が趣味など細かいディティールや問題の少女二人組のキャラクター描写もそのまま継承しているのが分かる。
リメイクするくらいだから当たり前だけど、イーライ・ロスは本当にこの作品が好きなんだな。
ノック・ノックの製作クレジットには本作の監督ピーター・S・トレイナーの名前もある。
そもそもこのピーター・S・トレイナーのフィルモグラフィは、簡単に検索する分には、監督作はこの1本だけで、2~3本の映画プロデューサーという立場で、本職は監督ではないようだが、監督したのがよりによってこの1本ってのが、逆に本作に思い入れを感じて怖い。
この作品、ノック・ノックを見ているので、どのような内容かはおおよそ分かるわけで、決して、気持ちすっきり爽快!な映画ではない。
真正のマゾヒストなら別だが、家族の留守中に都合の良いチャンネー2人の訪問と思ったら、とんでもないしっぺ返しを食らうわけだから。
しかしノック・ノックには無い、映像以上の不気味なオーラが本作にはある。
嬉しいのはノック・ノックの振り切り方が、本作でも十二分に発揮さているわけで、時代的な古臭さや貞操観念みたいな窮屈さが無い事。
むしろバキバキの細部まではっきり綺麗なデジタル撮影ではなく、フィルムの粗い粒子の映像が、目の前に展開される暴虐の限りを一種悪魔的な禍々しさをもって感じられる。
イーライ・ロスがクレバーなのは、リメイクでキャラクターのかかえる内面を薄くして、徹底的に無邪気に、ある意味明るい悪魔的なキャラクターを少女2人に付与し、ケータイやSNS等現代的ガジェットを駆使してメンタル的に“厭”という着地なのが上手い。
これは現代においては身体的な死、とは別にネット上での自身もまた精神的身体性を持ち、ネット上での死は、精神的な死と言える今の世には整合性があると思えるから。
個人的には本作のある意味、ストレートに身体的な“厭”の方が救いがあるんじゃないかと思えるのは皮肉。
もう、これでもかと鬱々とした暴虐の限りに耐え続けた先に待つ解放感は見事な映画的カタルシス!!
あと、食事シーンも凄く巧い。食べ方、物を置く際の力加減って、本当にその人の内面出ますよねぇ。
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