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小三治のxxmamarukoxxのネタバレレビュー・内容・結末

小三治(2009年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

感動した。

朝9時から柏で上映とか生粋の埼玉県民からしたらひゃくぱー無理だと思っていたけど余裕だった(休日に7時前の起床)。
キネマ旬報シアターさん、ありがとうございます。

小三治は「人を笑わせるためには笑わせようとしないこと。」というようなことをよく言っていたけれど、客の側から言わせてもらえばおれも笑いたくて見に行ってるんじゃない。ただ、小三治というおじいちゃんの話が聞きたいだけ。ただあなたが好きなだけなのだ。という感じです。
自分は果たして落語が好きなのか、小三治が好きなのか。

みんな取り憑かれている。
横尾忠則は絵に、カウリスマキは映画に、真島昌利はロックンロールに、小三治にとっては落語だったのだ。

おそらく70歳手前頃の映像だと思う。小三治として完成しているように見える。そんな顔と物言いをしている。でも近年の映像と比べるとこれまだ完成してないな、と思う。進歩、成長、前に進む、とかいう意味ではなくて、この人はまだ作ってる。死ぬまでずっと作っていた人なんだなと思った。

志の輔が、古典落語なんてかつての大名人たちが足して引いて足して引いてを繰り返して完成しきっているものを今やるのだからそれを自分のものにするということはとても難しい、的なことを言っていた。
音楽で例えるなら全員ビートルズの曲ばっかやって、別々のバンドが同じ曲を自分なりにやって客を楽しませてください選手権みたいな。
地獄。

だからこそ、演目というよりは人を聞きに行くという感覚に近い(自分は)。

BGMも著名人の解説などもほぼなく、104分を余裕で成立させるのは小三治の人としての魅力が大きいように思うけれどそれだけじゃない。映画としてもすごく上品なものだった。監督が誰なのかまったく知らないのだけど、おそらく小三治のことをひどく好いているだろうことが伝わってくるし、素晴らしくおしゃれな人なのだろうなと想像しました。
ちなみにフィルム上映だったのだけれど、めっちゃよかった。映画は光なのだな。

小さんの背中を見て得たものを自分のものにして、それを自分の弟子に背中で語る。
自分にも他人にも厳しく、でも他人への厳しさはやさしさであり、それはありふれた言い方だけど、実際にグッと体現していた。なんかいつも何か(社会)に腹を立てているし、「いい加減にしろばかやろー」って高座で言ってくれると気持ちいい。でも直後に「なんてね」とかにっこりして。
この世の「わからないもの」の存在を認めていながらも研究熱心で考えることをやめない。そんな人がなんであんなにやわらかい噺家になれるんだろう。生も負も善も悪も区別せず等しく見つめていたように思います(それは自分の思い込み)。

ちょーかっこいい。
また会いたい。
おつかれさまでした。
ありがとうございました。
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