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クラッシュのYNKOのレビュー・感想・評価

クラッシュ(2004年製作の映画)
4.2
ある面で差別されている人が、別の面で他者を差別していることもある。
差別主義者が、それ以外の面ではごく普通の善人だったりすることもある。
まったく差別意識からではない言動が、差別と受け取られてしまうこともある。
正義感が強く普段は差別を嫌悪している人が、切羽詰まった状況で差別的行動に出てしまうこともある。

差別者と被差別者、善人と悪人、強者と弱者など、単純な二項対立で描かれがちだけど、現実はそんなに単純ではないし、誰もが両方の側面を持っている。
この映画は、そういう複雑な現実をものすごくリアルに、淡々と描いているところがすごい。

正義感溢れる白人警官が黒人青年を撃ってしまう場面は、本当に辛いしやるせない。私自身、差別も差別主義者も嫌いだが、追い込まれた時、身の危険を感じた時に、差別する側にならないとは言い切れない。差別は良くないから差別しない、というのではなく、無意識に持っている偏見について自覚し、それがどこからくるものなのかを考え、その対象のことを知る努力が必要なのではないか、と考えさせられた。
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