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母のおもかげのkogureawesomeのレビュー・感想・評価

母のおもかげ(1959年製作の映画)
4.8
男親が再婚する。
男親には小学生の息子が、再婚相手の女性には幼稚園くらいの娘がいる。
実母が亡くなって半年ほどで新しい母親が出来た息子が継母を「おかあちゃん」と呼ぶか、呼ばないかだけで一本の映画になっている。
息子の気持ちに寄り添うような繊細な映画だった。
悪人は誰一人出てこない。善人しか出てこない。それでも息子は「おかあちゃん」とは簡単に呼べない。誰も悪くないけれど、物事がうまく進まない。
そういえば、清水宏の代表作の一本『風の中の子供』の中で拘留された父の嫌疑がはれて家に帰ってくる場面がある。嬉しさを隠せない息子たちが「庭のなかを走り回り、変わるがわる縁側の左から右から、縁の下から、顔を出しては「おとうさん」「おとうさん」と呼ぶ。ちょっと言葉には表せない素晴らしいシーン」(山田宏一)があったことが思い出される。
フランスで『大人は判ってくれない』が作られたり、日本でも大島渚が『青春残酷物語』を作っている頃の作品。
清水宏は古い時代の象徴だったかもしれない。しかし古いも新しいもない。
男親が息子を叱るシーンにハッとし、
兄妹喧嘩のシーンは軽い戦慄を覚えた。
ラストの場面は他のシーンと明らかにバランスを欠くくらい長いが、どうなんの?ここで場面が切り替わらないの?とそれまでの場面つなぎなら、とっくに次のシーンに行ってるはずなので戸惑うのだか、このラストシーンには必要な時間だと観終わって思った。
やはり清水宏の映画は独特で面白い。
再婚相手の娘役の子がいい味出してる。
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