COZY922

容疑者Xの献身のCOZY922のレビュー・感想・評価

容疑者Xの献身(2008年製作の映画)
3.6
以前某シアターで東野圭吾特集をやっていたのを鑑賞。ひと言で言うと『論理的なはずの理系の天才学者が、理屈を凌駕する強い感情に流されて起こした悲劇』だった。

謎解きに関わるのでこれ以上書けないけれど、人間は感情の生き物だということがよくわかる。程度の個人差はあれど、強い感情や愛情が合理的な判断を妨げ それが結果として望まない展開や予期せぬ結末を招いてしまうというのは珍しいことではないと思う。

天才数学者と天才物理学者。私情を抑えて冷静に考えれば決してしなかったであろう判断。人間がやることは理屈どおりにはいかない。喜び、悲しみ、寂しさ、怒り、嫉妬、羨望、誰かを愛おしく思う気持ち・・。他人はもちろん、自分自身のものであっても、感情を理性で100%の確度でコントロールするのは困難だ。

細やかな心情描写の不足や原作とは異なる人物像は多少目につくけれど2時間の尺にうまく収め、やるせない余韻をもたらす作品になっていると思う。キャストも皆 力演で、その中でも、屈折した感情やどこか無機質で不気味な佇まい、溜めていた感情が噴き出すシーンなど堤真一の演技が際立っていた。

ただ、このタイトルだけは個人的にあまり納得感がない。”献身”。起きたことの重さからするとこの言葉を使うのには正直違和感を覚える。自分自身の思いに忠実だったという点に着目して『容疑者X - その思慕への忠誠』とか、だめかなぁ。
COZY922

COZY922