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容疑者Xの献身のtenのレビュー・感想・評価

容疑者Xの献身(2008年製作の映画)
4.9
ガリレオシリーズ&ミステリー作品とは無縁の生活を送ってきた私でもすんなり入り込めたので、ぜひ私のような方でも観ていただきたいです。過去作の中では最も地味と言われているだけあって本当に地味。でも俳優陣の芝居が輝きすぎて、色彩豊かなセットとかCGとかアクションとか、わざとらしいお笑い要素などを含まなくても生身の人間の発する言葉や空気だけでこんなに見応えある作品となって世に放たれるなんて素晴らしいと本気で思った。全然関係ないけど元旦那に付き纏われている花岡靖子の姿に一緒に観ていた父親が涙していて、(驚いたが)彼氏にしろ旦那にしろ絶対変な男は連れて来られないなと思った。観終わったあとに原作も読破したけど原作も原作で読みやすくてめちゃくちゃ面白いし、「人は時に、健気に生きているだけで誰かを救っていることがある」がまさに石神哲哉の生き様で切なかった。「いってらっしゃい!」といつも明るく見送ってくれる花岡靖子、「いしがみさーん!」と人目を気にせず笑顔で手を振ってくれる娘の美里ちゃん。部屋の壁越しから聞こえる楽しそうな親子の様子。花岡親子にとってはごく普通の些細な日常が、石神にとっては救いであり生きる理由だったはず。それがあんな形で、最後はごめんなさいと何度も謝られてしまう。事件当日、大きな物音がした瞬間に何か起こっているとすぐに察した石神はすぐに駆け付けて暴れる男を止めたり警察を呼んだりと何か行動があったはずなのに、そのほんの行動ができない故に彼なりの償いだったのだろう。しかし何の罪もない人間の命を奪った石神に対して100%寄り添うことはできないし、正当化もしたくない。原作を読んだ人からは、石神哲哉役が堤真一なんてちょっとかっこよすぎない...?!と戸惑いもあったらしいが堤真一以外誰がいるんだろうというぐらい完全に堤真一がこの作品の軸になっていたと思う。石神の前では物理学者湯川学ではなく大学の同期としての湯川学が垣間見れて新鮮だった。「君が友達だからだ」には湯川先生にも友達とか、そういう概念があるんだと(すみません)少し胸を打たれた。
土曜プレミアムか何かでテレビで放送されていたのをたまたま観れたけど、こりゃー映画館で観たかったなーというのが観終わってすぐ最初の感想。このあともすぐ真夏の方程式も沈黙のパレードも観ましたが、あまりにも容疑者Xの献身が良過ぎて他作品も面白いのに薄れてしまう。それぐらい良かったです。観て良かった映画に絶対ランクインします!!!!!!
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