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容疑者Xの献身のshihoのレビュー・感想・評価

容疑者Xの献身(2008年製作の映画)
4.0
「容疑者Xの献身」。献身とは、「我が身を犠牲にして尽くすこと」これほど秀逸なタイトルがあるだろうか。
ミステリーは得意ではないため、あまりそそられはしなかったが、昨今話題のため視聴。ミステリーというカテゴリーにしていいものかどうか悩む。人間の愛とエゴの物語。

これまで生きてきた24年間、「この人のためになら死ねる、どうなってもいい」と思える究極とも言える愛はまだ知らない。対して、究極の愛を見つけた石神はある意味幸せなのかもしれない。詳細に石神の人生は語られないが、同じ天才であるはずの湯川とは対照的に、冴えず暗い雰囲気を纏う彼からは、本人も言っていたように人生への諦めを感じる。そんな絶望した人生の中に一筋の光が差し込み、束の間の安らぎと幸せを感じた時間は彼にとってかけがえのない、もしかしたら人生の中で初めての希望だったのかもしれない。昼間、隣の部屋で親子がゲームで盛り上がる声を聞く彼の優しい顔が目に浮かぶ。花岡親子は彼にとってまさに献身に値する存在だったのだろう。

人は、わたしも含め、対価や見返りを求める生き物だろう。まして他人であれば尚更。そんな感覚すら凌駕する石神の純真とも崇高とも言える愛。序盤で湯川が言っていたが、愛とは確かに不可解で理論では証明できない感情である。しかし、だからこそ希望にも生きる理由にもなり得る。
わたしも生きていく中でそんな感情を得ることができるだろうか。相手は将来結婚するパートナーかもしれないし、まだ見ぬ我が子かも。時には汚くてエゴにまみれた「愛」だけれど、誰かの人生を救い、世界を回す歯車にもなり得る大切な感情は、どんな天才科学者でも一生解明できないのだろう。
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