「作られた英雄たちの苦悩」
「硫黄島からの手紙」の逆側を描いた第二次世界対戦におけるアメリカのお話。タイトルにもある通り「星条旗の石像」のルーツを描いた作品となっております。
イメージにもある星条旗を立てるアメリカ兵達の姿は英雄として国の士気をあげるべくプロパガンダとして使われることとなるのですが、問題は旗を立てた彼らは戦っていなかったことにあります。
正確には安全地帯にいた者がほとんどであったというところなのですが、それゆえに英雄としてもてはやされる度に「戦死した仲間や激戦地で戦う兵士たちこそが本当の英雄であるのに、どうして自分達だけが今も生きているのか」と考え続けてしまいます。
実際、星条旗の彼らは戦争経験者とそうでないものがおり、経験者たちは前述の苦悩と戦い続けますが、プロパガンダ要員の広報員は調子に乗り続けます。
現実を知る彼らは虚構に魅せられている国民とは一線を引いてその平和を享受出来ません。
昨今ではベトナム戦争やイラク戦争によるPTSDが問題となっているほどに苛烈な戦争が現実にある中で、名も知れない英雄が戦っているかもしれないと考えさせられました。
物語としては残された彼らの使命やその後の人生まで描かれているため、近い距離感で観られますし、現実を知る者と知らぬ者との対比も良かったです。
「硫黄島からの手紙」とセットで見ると両者の観点から見ることが出来るので良かったです。