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ザ・デクラインのdionemishのレビュー・感想・評価

ザ・デクライン(1980年製作の映画)
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BLACK FLAG、X、The Germsなど今でもその名を目にするLAパンクバンドらが起こしたムーブメントを追ったドキュメンタリー。ポゴダンスに溢れるライブの様子は圧倒される。

終息した後に関係者らが過去を振り返るのではなく、ムーブメント真っ只中に制作されているため、彼が持っていた純粋さや孤独や怒りなんかがそのままカメラに映されている。バンドやマネージャーだけではなくその場にいた観客(バンドメンバーに劣らず皆ギラついてる…)に怒りの理由について個人インタビューをしているのも当時だからなせる業。そしてこのインタビューを受ける客達が映画でしか観たことないようなクセの強い人々で観ていて非常に興味深いし、共通して彼らがバンドの連中と同様に寂しそうでイライラしててとてもピュアで、その様子に心打たれる。

どのシーンも面白いのだけど、特に響いたのがThe Germsのパート。
バンドのシェアハウス内にてボーカルのダービーが「なぜハイになって演奏するの?」という質問を受け、ハムエッグを焼きながらぼんやりと「そうすれば痛みを感じない。すごく怖いんだ…観客の中にはヤバい奴がいっぱいいる。俺に恨みを持ってる奴も。ハイでなきゃステージに立てない」と答えていたのが、この映画の公開年に自殺した彼の後の運命と相まってとても切ない。そしてそう答えた直後にダービーは殻を割った卵の黄身を誤って潰してしまうんだけど、そんなシーンをしっかり残す監督のセンス、素晴らしいと思った。
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