ブルーノ

わが青春に悔なしのブルーノのネタバレレビュー・内容・結末

わが青春に悔なし(1946年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

 1946年に公開した本作は、GHQが製作を奨励したいわゆる「民主主義映画」の代表的な1本であるらしく、あまり見たことのないタイプの作品で面白かった。それと同時に、誤った正義感で野毛一家を断罪する村の人々などは、今の時代にも共通するところであり、恐ろしく感じた。

 黒澤明の技術的な演出も散見され、特に幸枝が野毛に「秘密を教えて」と詰め寄る場面では、二人の間に流れる無言の間を長尺で映すなど、かなり攻めた演出も見られた。

 また、なんと言っても主演の原節子が素晴らしく、私は小津作品(すべてを見たわけではないが)での彼女しか見たことがなかったので、化粧を落とし泥まみれで農作業をする姿には衝撃を受けた。

 いまを生きる我々の多くが、本作で描かれているような「価値観や常識が180°反転する経験」をしたことがない。保身や無関心から多くの民衆が間違えれば、正しいことが悪とされ、排除されてしまうのだ。実際の経験なくしてこの感覚を獲得することは難しいかもしれないが、本作を見てこうしたファシズム的な空気には常に敏感でありたいと思った。
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