わが青春に悔なしの作品情報・感想・評価

「わが青春に悔なし」に投稿された感想・評価

なかなか良い。原節子の顔が相変わらず怖いが。
彼女がドアの前で何種類かのポーズを編集で矢継ぎ早に見せるところ、まるでゴダールだった。まさか黒澤にゴダールを感じるとは…

また、原節子が野毛の事務所の前をウロウロ歩くカットを事務所の中きらガラス越しに移動撮影で撮るショットは見事と言う他ない。
ただ、後半が墨汁で塗りつぶしたかのような画面に長い間という、いつもの黒澤のビンボ臭い画面になるのが残念。
傳次郎は相変わらず最高!

野毛とのキスシーンが無いのが異様な感じがする
Marrison

Marrisonの感想・評価

2.0
攻めの映画。サッカーに譬(たと)えれば、“ボール支配率7割以上で、シュートも驚異的な数“。しかし、“枠内“は一つもなく、………勝ちあぐねる。
理念上の説得力はもちろん大あり。東京裁判史観の正邪は措(お)いて、治安維持法時代への総括はそりゃもう日本のリスタートに必須だっただろうから。
滝川事件の頃には「戦争妨害」なんて言葉があったんだ? 可笑しすぎて、私もこれからバンバン妨害したくなる!!(一人で笑ってるだけなんだから、共謀罪での逮捕なんてできないよ、当局さん。)

さて、この攻めの映画のワントップ────原節子さんの、映画女優力(スクリーン映え度+演技力+奥底からの存在感)は既にひとたび1939年の『東京の女性』でおそらくは満点を叩き出しており、それが49年『晩春』・53年『東京物語』での空前絶後な感じ(一女優を超え、銀河系アンドロイドへと昇華してしまえる羽衣!)を纏うまでの、過渡期(戦中~敗戦直後の国家もろともの暗中模索期)にいた彼女の、貴重な格闘記録の一つがこの映画なのかも。
的外れだったら彼女の霊に謝りたい。でも、原さんって、ひょっとしたら本当にダイコンだったんじゃないか、見方によっちゃ美人でさえもない、と鑑賞中にタブーを胸中で呟いた私は、田んぼで汗土にまみれる彼女の力演(特に、転向した男との再会シーンでの神々しい一睨み)にも、こんな目つきの男友達を持ってる私なもんだから感動まではしなかった。(むしろ農作業にしても泥塗られの顔にしても、『裸の島』『どぶ』の乙羽信子さんの奮迅の方が非凡だ。わが眼には。)
ともあれ、“試合終了まぎわ、何本かのシュートは枠内だった”ね。



ところで、今回、私は東京国立近代美術館フィルムセンターの「原節子選集」でこの作品を観たのだけれど、同選集の『東京の女性』と『美はしき出発』のレビューを書こうと思ったら、Filmarksになかった。
反則の誹りを惧(おそ)れつつ、『東京の女性』についてはここに書いちゃお。(『美はしき出発』の方は、原さんとの初共演を果たした主演・高峯秀子さんの可憐さばかりが際立つ作品なので、書くのは遠慮。)




◆◆◆東京の女性◆◆◆  4・9点

最初は、お猿がこしらえたB級未満映画かと思った。屋上での立松晃さんたち男優二人の立ち回りがあまりにもフニャフニャだったから。予感としては、原節子様は単に“掃き溜めのフラミンゴ”。。。。
ところが、意欲零点のその屋上シーンを除けば、す、す、凄すぎた!

まず、節子様の女優力の完璧さ(容姿・装い・言葉出し・表情・所作・たたずまい。モガモードを跳び越えた男装麗人そのものである太タイ・縞スーツや、妖精サブリナもびっくりの車オイルまみれさえも!)がこの作品を照らしに照らして全体をザ・太陽系にしてる。
それに加えて、妹役の江波和子さんのCanCamな魅力(まるで世界一美しい案山子?みたいな、超絶的&超時代的な抗しがたい可愛らしさ)は、な、な、何なの!! 姉妹とも、いったい何を食べたらそんなに「美しく」「大きく」育つの???
節子様には当時ヒットラーが求愛したくなったらしい、という今じゃ遠すぎるような歴史にも、思わず「いいね」を送りたくなっちゃいます。妹への節子様の“能う限り本気っぽい”張り手二発は、先述の屋上での男優陣と比べて凄味。大振りよりもショートフック気味のがリアルか。本当に江波さん痛そうだった。

最後の(脇見が変に多い)運転シーン、死の予感や泣き顔もありえたのに、節子様の顔つきがああいうふうに変わった(翔け上がった)のは、まさに『東京の女性』なるタイトルの完結、作り手側の高らかな離陸宣言でした。───男前? 女前? どっちでもいいわ。とにかく『帝都の婦人』や『お江戸のおみな』じゃない。原作がまず偉いんだけど、日米開戦以前でのこの言葉選びだよ! 2017年の今だって、東京新聞(首都圏で最もマシな新聞なのでここで挙げる)なんかの連載ルポルタージュの題になってもおかしくない、硬質で清潔な今日性! 正直、私、タイトルに惹かれてこの映画を観に行ったのでもある。
逆にいえば、男性社会に食い込んでキャリアを求めゆこうとする女性の隘路感(恵まれてきてはいるけど、やっぱ生きにくいのよね)は1939年頃と今とでそんなに変わってなかったりもする。

『風と共に去りぬ』にこれがリアルガチにぶつかっていった、あの重要な時代を私はもっともっと理解したい。フェミ視点とはまた別に、日本列島が(捨て石扱いが続く沖縄を皮切りに)偏狭ファシズムにいよいよ再び冒されつつある2017年の今だからこそ。
だってさ、お姉ちゃん(節子様)や水代ちゃん(江波さん)みたいなキラキラの女子が、わずか数年後にはモンペ姿や質素な和装での銃後生活に閉じ込められて、ついには大空襲や原爆で黒こげになって皮膚という皮膚がビロビロ垂れ下がって「水。……水をください」「赤チンください」だけ言いながら死んじゃったりしたんだから。

それにしても、水代ちゃんの江波さんは………単なるお馬鹿なコケティ役になんかとどまらず、(台本のすばらしさもあって)フェイントまで幾度も繰り出しつつ、殊勲・敢闘・技能賞全部あげたくなるぐらい役割全うしてます。彼女の出来次第では凡作にもなりかねなかった映画です。
綺麗といえば、バー(キャバレー?)の女給役の人もでした。
その一方、母さん(水町庸子さん)の演技をカメラがあまり丁寧には捉えようとしなかったのはちょっと淋しい。クローズアップしてもわずか半秒で暗転とか。華のない役回りだからといってあんまりです。
二枚目役の立松さんは(例の屋上シーンだけは絶対に要撮り直しですけど)、まあ合格。プロですね。
外国人が撮影したカラーフィルムに原節子が映ったのはこの映画の撮影時。
あの優しい笑顔が崩れる時もまた美しい
タイトルと原節子ってことでみたけど黒澤明なんだな、小津の映画とは違う原節子がみれた。あらすじとかを読む限り非常に感動しそうなんだけどだらだらみてしまいあまり感じるものがなかったからもう一回見たいかな。いやでも全体のリズム感がいまいちだったのかもなぁ。
ゆにけ

ゆにけの感想・評価

3.8
後半の鬼気迫る原節子さんの表情は凄い
小津作品の穏やかな原さんと違う強い情念の演技
画面の動静、明暗、強弱のコントラストがとても黒澤っぽい
無声映画でも通ずる。

『顧みて悔いのない生活を』
言葉で言うのはぺ〜って言える。
でもこれをモットーに
一生ブレず生きるのが
どれだけ難しいことか。
1980年3月9日、並木座で鑑賞。(2本立て、400円) 

軍部の思想弾圧によって大学を追われた教授とその娘(原節子)の物語。 
原節子は、あくまで自分の信念を貫いて生きていく。この姿が力強い。他の人々から嫌がらせを受けてもメゲずに頑張る姿が、印象的である。 

ただ、自分としては、こうした信念的映画を観た後は、「こういう人たちもいるよな」という気持ちであり、作品にのめりこむことは難しい。特に、映画が発するメッセージに同調できない(共感できない)場合は、特にそうだ。 

いつだったか忘れたが、以前、NHKが『カラーで見る昭和の風景』といった映像を集めて放映したことがあったが、そのカラーフィルムの中に、この映画「わが青春に悔いなし」のカラー映像によるメイキング映像があった。 
緑色に輝く草原で原節子が過ごす場面であったが、このカラー映像が美しかった。 
この映画自体はモノクロであるが、カラー映像で垣間見た原節子の美しさは感激ものであった。
茶一郎

茶一郎の感想・評価

4.1
 タイトル『わが青春に悔なし』なんて聞くと、どれほど輝かしい青春時代を描いた作品かと思いますが、実態は真逆、この『わが青春に悔なし』は、第二次世界大戦中の銃後の若者の青春を描く。そしてその青春は、全体主義・ファシズムと闘った意志強き若者たちの青春であり、彼らが犠牲にした青春のおかげで今を平穏に生きている我々にとって波乱万丈、残酷な地獄のようなものでありました。
 
 今作『わが青春に悔なし』は、思想弾圧事件「滝川事件」とスパイ事件である「ゾルゲ事件」、この二つの実際の事件をベースに、自由主義者の八木原が教授を務める京都帝大学の学生・主人公の幸枝(原節子)、野毛そして糸川、3人の若者の青春を描いていきます。幸枝は戦中の時代に反発するように「自分」を求める強い女性であり、幸枝が心惹かれる野毛は過激・行動派のインテリとして、また一方で幸枝に心を寄せる糸川は穏健・慎重派のインテリとして、主人公・幸枝を中心とした野毛と糸川2人の対比を当時の知識人を象徴させて人物ドラマを語ります。
 尤も冒頭最高のシーンは、その三人が山にピクニックをして、野に横たわり「なんだかいいなぁ」と何とも静かなシーン。黒澤明監督自身、「戦中は穏やかな青春を描くことが許されなかった」という、当時の抑圧的な製作状況に反発するように抜群にこのシーンは素晴らしい。
 しかし、この平穏な青春の一瞬は銃撃音という戦争の足音にかき消され、物語は思想弾圧との闘い、戦争へと向かっていきます。

 戦中、「滅私奉公」の美しさを描いた『一番美しく』を撮った黒澤監督は一変して、戦後、戦中の全体主義と闘う若者を描いた『わが青春に悔なし』を撮りました。今作について黒澤監督は「初めて言いたいことが言えた映画」と語っていますが、強い脚本修正の要請の最中、物語を歪にしながらも主人公・幸枝が田舎に行ってからのラスト30分に全てを賭けます。
 まるで木が、草が、風が幸枝に「スパイ」と囁くように、幸枝に対峙する世界・世間。この世間に対峙する市井の一般市民という構図は後の『生きる』であり、村社会の怖さを描いたとすると『七人の侍』の百姓たちの描写を想起します。
 美しいクライマックス。野毛の「顧みて悔いのない生活」という言葉を反芻しながら確固たる意志を貫き、田を耕す幸枝に風が吹くラスト、これこそ黒澤監督が今作に賭けた思いが詰まった最高のラストであります。物語は、幸枝が強き意志をもって確固たる「自分」を得る執着し、そこには自我を持つことを許された戦後の女性像としての幸枝が誕生しました。
 
 戦後間もなく強く美しい女性を描き、なおかつ自由を弾圧した戦中の反省を込めた今作『わが青春に悔なし』、そして黒澤監督は次作として戦中を振り返るのではなく戦後の未来を見据える『素晴らしき日曜日』を撮り、今作を転機として監督の視線は未来の方向を向くのです。
いとそ

いとその感想・評価

3.4
戦時中とは逆に振り切れた占領期のプロパガンダ臭がちょっとキツいが、もっと普遍的にヒューマニズムを描いたものとして捉えるなら悪くはない。田植えのくだりの原節子の表情がいい意味でホラー
昭和初期の京大の教授の娘が反戦活動に関わり結婚し成長して行くお話
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