「あの夏あの人たちと過ごしたんだ」
もう二度と会えない人たちともう一度だけ言葉を交わすことができたなら、懐かしくて温かいあの場所に帰ることができたなら、それはとても幸福なことでこのまま死んでもいいとさえ思えたのです。
幼いときに死別した父と母に再会するひと夏のファンタジー。
後悔と贖罪、溢れんばかりの感謝を。
淡く揺らめく真夏の陽炎のようにいつまでも胸の中で燻る想い。
私の両親は幸いにも元気でいてくれているけれど、「あとで」や「今度」という言葉がいつ使えなくなってしまうのかなんて誰にもわからない。両親だけに限らず、身のまわりの大事な人たちを大切にしていかなければと感じたとともに、感謝の想いで満たされていく温かくて切ない素敵な作品でした。