OASIS

クレールの刺繍のOASISのネタバレレビュー・内容・結末

クレールの刺繍(2003年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

スーパーのレジ係として働き、望まぬ妊娠をしてしまった17歳の少女クレールと、一人息子を事故で失った刺繍職人のメリキアン夫人とが刺繍を通して心を通わせていくという話。

目の覚める様な赤髪が眩しく、大量のそばかすがあどけなさを残すクレールは、親友のリュシルとその兄ギョームや母に勧められて寡黙な夫人の元へとやって来る。
夫人は息子をバイクの事故で亡くしており、しかも彼と一緒に乗っていたのがギョームだという何とも居た堪れない関係性の中に入り込んで行くクレールの思い切りの良さと精神力の強さが凄い。
だからこそ二人が打ち解けて行くのが多少早く感じても、そこはクレールの止めどなく溢れる魅力のおかげという事で納得した。
「テストしてみて」と渡された布で寸分違わず模様を描いて見せる手捌きも潔くてパワフルというか「この子になら任せても良い」と思わせる物がある。

周囲に「ガンなの」と言いふらすが、痩せるどころかどんどんふっくらして行って、次第に大きくなり目立ち始めたクレールのお腹を見ても「何なの?」と全く気付かない母親とは反対に「私はすぐに気付いてた」と変化に敏感な夫人との違いに親子関係のコミュニケーションの稀薄さを感じるし、自殺未遂をしてしまうような夫人との孤独な物同士が糸を紡ぐ様に繋がって行く家庭は美しくもあり哀しくもある。

赤い髪やオレンジ色の町並みとは対照的に、時折覗くブルーの風景が町に存在しつつも何処か別の場所に魂を置きっ放しにしたような空虚さを感じさせた。
出来上がった刺繍は氷の結晶や万華鏡のようで煌めいて美しいのだが、それを纏う夫人から放たれる暗闇が光を包み込んでしまい、全力で光を放出できない昏さが街全体が覆っているかのようだった。

三年間町を離れるギョームとの別れのひと時で、卵を宿した魚を湖に放す→私も同じような存在かも→最後に結ばれる→私やっぱり生む!という心情の流れが掴みにくくて、どうしてそうなった状態だったので戸惑った。
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