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オーケストラ!のsoycraneのレビュー・感想・評価

オーケストラ!(2009年製作の映画)
4.0
 メラニー・ロランが全てと思いきや、オーケストラという通常はとっつきにくい世界を、音楽が「人と人とが理解し高め合うことのできる最高の手段の一つ」であることを描くことで、鑑賞者にその素晴らしさを共有させることに成功している。

 政治的背景や楽団員たちのコメディ的描写も挟まれて進行していくけど、なんと言っても上記テーマを爆発させる、やはり肝はラストの演奏シーンでしょう。

 チャイコのヴァイオリン協奏曲第1番。郷愁とか哀切とか、ロシア人と日本人が一番共鳴しやすい部分を絶妙にスコアに醸し出すチャイコフスキーの、最もわかりやすいメロディをもつ協奏曲。ソリストがいるこのキャッチーな協奏曲を採用することで、交響曲(の中でのコンマス/コンミス)ではわかりにくい、楽器/音楽を通して人と人がわかり合うことがモチーフとなって盛り上がる。烏合の衆である急ごしらえオケと、それを全く信用しないソリスト、両者がお互いの演奏だけでリアルタイムでどんどん共鳴し「100%マッチ」していく様は観ていて鳥肌。映像なので、モノローグとしてアンヌ=マリーの両親エピソードを挿入することで、楽器で理解し合える(言葉は不要)音楽人/人間への賛歌として見事に成立させている。楽曲自体はカットされている部分が多いが、ヴァイオリンソロでの過去と現代の交互シーンは涙を誘う。

 チューニング皆無であの最後到着の2人いけるんかとか、やや少ない編成でこの音圧?とか、メラニーCG合成でさすがに違和感ある演奏シーンもあるし(それでもまぁよくやっています)、突っ込みどころは満載なんやけど、この最後の協奏曲シーンだけでも何度でも観てしまう。んで観る度に泣ける。非英語って個人的になかなか抵抗あるんやけど、本当にいい映画です。
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