トランク

アーティストのトランクのレビュー・感想・評価

アーティスト(2011年製作の映画)
4.0
普段馴染みのない無声映画ということもあってずっと気になっていた映画。面白かった。

無声映画のため途中で飽きが来ないか心配だったが、テンポのいいストーリーであったので終始楽しめた。
本映画主人公で無声映画のスター、ジョージとエキストラからスターへの階段を登っていくヒロイン、ペピーの対照的な描かれ方がわかりやすかったのも飽きずに楽しめた理由の1つか。

印象的だったシーンは、ジョージが監督からトーキー映画を紹介された直後の夢のシーン。ジョージの周囲のものの音が聞こえるようになるが、ジョージの声は聞こえない。
これからトーキー映画が主流になっていく中で、無声映画とともに生きてきたジョージが時代に取り残されていくのを暗示していた。このシーンの表現方法が上手いと思った。
映画会社の階段の踊り場でジョージとペピーが再開するシーンも印象的。階段を上がる若い新人売り出し中の女優ペピーと階段を降りる途中の中年映画スター・ジョージ…このカットもこれからの2人を表していたように思えた。考えすぎかもしれないが笑

終始考えていたのは何故ジョージがプライドを捨てなかったのかということ。映画の世界で生きるならば、無声映画もトーキーも同じ映画ではないかと思ってしまった。何故こだわったのか。
彼は新聞で「私は芸術家(アーティスト)だ」と語った。無声映画のスターである彼にとっては、無声映画こそすべてであって、言葉がなくても身体ひとつで表現できることに誇りがあったのか。
また、トーキーを初めて目にした時、彼は馬鹿にしていた。新しいものが登場すると非難する者が現れるが、彼もその1人だったのか。
またこの映画を見直して考えてみようと思う。

セリフが無い分、オーケストラのBGMに耳を澄ましていた。このシーンでこんな曲を使うのかと考えたりできて楽しかった。

最後はいい形で終わってすっきりした。

ジョージにずっと付いて歩いていた犬の演技も素晴らしかった。今まで見た犬の中で一番賢いのではないか笑人形ではないよね?

またいつか見直したい映画であった。
トランク

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