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約束の旅路のmatsuのレビュー・感想・評価

約束の旅路(2005年製作の映画)
4.4
心揺さぶられる映画でした!! 素晴らしい作品です。

1984年、エチオピアに暮らすユダヤ人をイスラエルに帰還させるモーセ作戦により8000人がイスラエルに移住した。しかし、その途中に飢えや疲労、襲撃で4000人が亡くなった。命がけの移住だった。


〜〜以下ネタバレあり〜〜

9歳のシュロモも移住した1人。難民キャンプで一緒に暮らしていた母親が、息子の将来を考えてイスラエルに向かうエチオピア系ユダヤ人の集団に無理やり入れたのだ。(母親は残る) ※実際、エチオピア系ユダヤ人と偽りイスラエルに入国したアフリカ人は少なくない。

シュロモは入国後すぐに一緒に来た知人女性が亡くなり、孤児院に入る。(この時点で非常に苦労している) その後、養子としてフランス系ユダヤ人の家庭に迎えられる。

移住したエチオピア系ユダヤ人たちはイスラエル政府によって歓迎された形ではあったが、実際には彼らは皆黒人ということもあり様々な差別に苦しんだ。

小学校ではある保護者から、シュロモが入るとクラスの勉強が遅れる事や感染病が怖いからアフリカ系黒人は学校に来ないでほしいなどと言われる。

ユダヤ人(ユダヤ教信者)として入国した事もあり、ユダヤ教の経典に関する授業で正解を答えらない時の周りの視線が冷たく厳しかった。

家庭でも食事が合わず、数か月まともに食べられなかった。養父母に愛されてはいたが、難民キャンプにいる実の母親が恋しく毎日泣いて暮らしていた。

そして何よりもユダヤ人と偽って入国した事が苦しみを倍増させた。

シュロモのイスラエルでの生活は、苦労や試練の連続であった。

中学生から高校生になり、シュロモは成人の儀式を行い、ユダヤ教の経典のディベートで相手を論破できる程に成長していた。白人の恋人(サラ)もできたが、彼女の父親は黒人を毛嫌いし交際を一切認めない。

高校後の進路を決める時期が来る。シュロモはフランスの医大に進み、医師になりたい。

希望通り、大学を卒業し医師になったシュロモ。同時にサラと結婚する。…が結婚式にサラの家族が誰一人来なかった(黒人のシュロモとの結婚は大反対)。

彼はイスラエルではなく、母国の難民キャンプに国境なき医師団の医師として赴任する。

シュロモは難民キャンプの人々の中に、幼い頃に別れた母親の姿を見つけ抱きしめる。母親は嗚咽が出るほど泣きに泣く…

実話に近いフィクションの作品ですが、シュロモの苦しみや成長を感じて心を揺さぶられ、いろいろ考えさせられました。(隠れた)良作映画でした。
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