やっぱりカルカン

わが母の記のやっぱりカルカンのレビュー・感想・評価

わが母の記(2011年製作の映画)
3.2
「綺麗な所だけしか見ていない」と思いました。お金持ちの長男の目線でストーリーが描かれますが、主に介護しているのは周りの妹や家族や使用人たちです。
一般的に認知症の介護は壮絶なものだと思います。井上靖の自伝的小説が原作とのことですが、あまりにも浮世離れして美しく描かれすぎていたのでストーリーは正直に言って自分には合いませんでした。(介護がテーマなのではなく、親子の心模様を描いている作品なので仕方がないことだと思います)

面白いカメラワークや光と影の使い方、美しい自然の風景も素敵でしたが、よかったのは役者さん。中でも樹木希林さんの演技が神がかっていました。
映画のタイトルで検索していると、ネットニュースにこんなインタビューが載っていました。
>> 外国人記者からは認知症の老いた母親を演じた樹木さんを絶賛する声が相次いだが、樹木さんは「大ざっぱな役者なので(認知症について)リサーチはないんです。ただ(来年で)70歳になるんですが、認知症の役をみんなやりたがらないので私に回ってくる(笑)」とおどけながら明かした。

いや〜難しそうですからね…
なかなかそんなに、誰でも出来るような役ではないと思います。途中から映画を見ているのかドキュメンタリーを見ているのか分からなくなるぐらい引き込まれました。
特に病状が段々と進行していく様子がセリフ・表情・動作のどれを取ってもリアリティ豊かに表現されていて、本当に素晴らしかった。

どう考えても樹木希林さん以外にこの役が務まる女優は居なかったと思います。今日この映画を見るか見ないか迷っていたのですが、樹木希林さんのあの素晴らしいお芝居に心が揺さぶられたので、やっぱり見て正解だったと思います。
最後は少し悲しいですが暖かくてなんとなく優しい気持ちになれます。NHKさん本日は放送ありがとうございました。現時点で今後何回も繰り返し見たいとは思えない事もあり、点数はやや低めです。