わち

松ヶ根乱射事件のわちのレビュー・感想・評価

松ヶ根乱射事件(2006年製作の映画)
4.3
新井浩文・山中崇という脇役コンビを主役の双子に据え、日本のとある田舎の閉塞感の中で現れる醜さを時に滑稽に時にシリアスに描いた映画。
オマージュ元である『ファーゴ』を先に観た上で鑑賞したが、あからさまに意識しているオープニングやブラックユーモアなど共通点はあるものの、親子や兄弟の間の逃れられない苛立ちや狭いコミュニティの鬱陶しさなど、人物に感情移入できる背景が描かれている分こちらのほうが好み。もちろん、日本が舞台だからということもあると思うけれど。
抑揚のない映像や、ふわっとしたラストの落とし方など、いわゆる邦画的なつくりなので万人向けではないと思うが、だらだらとクズばかり映された後のラストシーンは“ほっこり”なんていうくだらない感想では片付けられないカタルシスが得られて、個人的には最高だった。
ただ、ネズミのくだりはメタファであることを強調しすぎていてさすがに少々くどいと感じた。

山下監督は“上手くない会話”を演出するのが上手いイメージで、特に今回は山中崇の気持ち悪い感じが抜群だった。いままで何度も顔を観てきたのにあまり印象に残ってなかった俳優だったけど(すいません)ちょっとこれから注意して見て行きたい。
蛇足だが、地方ローカル独特の誰が見るんだよっていうテレビ番組がいろんな場面で流れているのが妙に印象的。
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