ひたる

遊星からの物体Xのひたるのレビュー・感想・評価

遊星からの物体X(1982年製作の映画)
4.0
https://www.banger.jp/movie/87656/

↑映画を観たなら是非ともこの記事を読んで欲しい。制作秘話を知ることができる。クリーチャーの発案、造形を手掛けたロブ・ボッティンの狂気的ともいえるこだわりを覗き見ることができる。
(回し者でも何でもないが、この記事のおかげで作品を何倍も楽しめたので全力でオススメしたい)

ーーーーー⚠️以下ネタバレ注意⚠️ーーーーー

CGなしでこのおぞましさ。公開年の1982年は「E.T.」や「ブレードランナー」などCGを用いる作品も少なくなかった。そんな中であえてCGを使わないという英断は制作陣の覚悟を感じる。CG等を用いた昔の名作を観ると、当時は革命的な映像だったんだろうけど今観ると安っぽくて良さが全く分からない、なんてことが多々ある。しかし特殊メイクなどのアナログな表現方法はデバイスの限界を越えられないデジタルとは異なり、新しいアイデアさえ思いつけば凝れば凝るほど完成度も高くなる。時代の波に曝されても風化しない職人技には畏敬の念を抱く。

ホラー耐性の全くない自分にはほとんどのシーンが怖かったが、血液検査で阿鼻叫喚になるシーンだけは声を上げて爆笑した。あそこは怖さよりも、わちゃわちゃした雰囲気が先行して喜劇っぽかった。身振り手振りからわかる焦り具合や、主人公が必死になってる裏で「あぁぁぁやばいぃやばいぃよぉぉお助けてぇぇやばいよぉぉお」みたいな声が絶えず聞こえてきて腹がよじれるくらい笑った。隊長の横で佇んでたやつが穴という穴から血を吹き出してガタガタ震え出しながら変態を遂げていくのもロケットの離陸みたいでこのままどっか飛んでいくんじゃないかって心配になるようなシュールな笑いを誘った。

クリーチャーも怖いが、疑心暗鬼になった人間も同じくらい怖いと思わせる、心の休まらない良いストーリーだった。

意図せず迎え入れてしまった「物体」に対し、犬たちが敵対心を露わにして一斉に吠え始めるシーン、惨劇の始まりを告げる鐘の音ようで好き。

終わり方は様々な解釈がされているようだが、私は生存者2人とも人間だったと思う。ここに留まっていてよかった、みたいな発言はこの恐怖を世界に伝播することなくここで完結することができてよかった、って意味で解釈した。
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