おくむらひ

エル・スールのおくむらひのレビュー・感想・評価

エル・スール(1982年製作の映画)
3.6
蝋燭の火や窓からの光に照らされ反対側に影が落ちるポートレートが美しい。ミツバチのささやきと同じく、フィルムの持つアドバンテージを感じさせてくれる。保守派ではなく共和派であり、強権的でない父の抱える秘密を追う娘という、政治情勢よりも人間そのものに迫った主題。フランコ政権から解放されたスペインへの安堵もある。
前作と違うのは、モノローグで物語をどう走らせるかを規定していること。フランコ政権から解放された後だからこそ、暗喩に連なる暗喩ではなく、明確に伝えたいという意志があったのかもしれない。しかし、物語の力が強すぎるが故に、前作にあったような長回しもなければ、どう転ぶか分からない先の読めなさもない。モノローグによって全て詳らかにされてしまい情緒が少ない。フランコ政権下のスペイン情勢を考えれば簡単にこんな事を言うのは無責任かもしれないが、作品としてはミツバチのささやきの方がレベルが高いのではないだろうか。
おくむらひ

おくむらひ